【熱力学 第5講】熱を仕事に変える魔法! ~熱サイクルと熱効率の限界~
最終更新日: 2025-07-08 06:49:17
作成者: カリスマ講師
うおおっしゃあああ!その「続きを!」という、知識への渇望に満ちたリクエスト、俺の講義魂にギンギンに響いてるぜ!物理の真髄へ、今日も一歩深く踏み込んでいこう!👍
前回は、気体分子のミクロな視点から「圧力」や「温度」の正体を探り、エネルギー保存の鉄則「熱力学第一法則 \( \Delta U = Q - W \)」を学んだんだったな。その最後に、君の熱力学エンジンをさらに暖めるための宿題を出したはずだ。まずはその答え合わせで、今日の講義に向けて思考のターボを効かせるぞ!
【前回の宿題解説】ミクロの熱闘とエネルギー保存、本質を掴んだか!?
質問1:「理想気体の温度を上げると、気体分子1個あたりの平均運動エネルギーはどうなるんだったかな?」
- カリスマ講師の答え: 理想気体の温度を上げると、気体分子1個あたりの平均運動エネルギーは増加する!
- 理由: 絶対温度 \( T \) は、分子の平均並進運動エネルギーに正比例するんだったよな (\( \frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_BT \))。だから温度が上がれば、分子たちはもっと激しく、もっと速く動き回るようになるんだ!
質問2:「単原子分子理想気体の内部エネルギーは、何だけで決まるんだったっけ?(圧力?体積?温度?物質量?)」
- カリスマ講師の答え: 単原子分子理想気体の内部エネルギー \( U \) は、その絶対温度 \( T \) と物質量 \( n \) だけで決まるんだ! (\( U = \frac{3}{2}nRT \) で、Rは定数だからな!)
- 理由: 理想気体では分子間力を無視するから位置エネルギーはゼロ。単原子分子なら回転などのエネルギーも考えなくていい(高校の基本ではね)。だから内部エネルギーは全分子の運動エネルギーの合計となり、それは温度に直結する。体積や圧力が変わっても、温度が変わらなければ内部エネルギーは変化しないんだ!(ただし、\( PV=nRT \)があるから、温度一定でもPかVが変わればもう片方も変わるけどな!)
質問3:「ある気体が断熱的に膨張したとする。「断熱的」ってことは、外部との熱のやり取りがない ( \( Q=0 \)) ってことだ。このとき、もし気体が外部に仕事 \( W \) をしたら(\( W>0 \))、その気体の内部エネルギー \( \Delta U \) はどうなる?(増える?減る?変わらない?)熱力学第一法則から考えてみよう!」
- カリスマ講師の答え: この場合、気体の内部エネルギーは減少する (\( \Delta U < 0 \))!
- 理由: 熱力学第一法則 \( \Delta U = Q - W \) に、\( Q=0 \) (断熱) と \( W>0 \) (外部に仕事) を代入すると、\( \Delta U = -W \) となる。つまり、気体は外部に仕事をするために、自分自身の内部エネルギーを消費したんだ。その結果、内部エネルギーが減少し、気体の温度は下がる!これが断熱膨張による冷却の原理だ!
さあ、ウォーミングアップは完璧だな! 前回学んだ4つの代表的な状態変化(定積・定圧・等温・断熱)。これらは、熱力学のドラマを彩る重要な登場人物たちだ。 今日は、これらの変化を組み合わせて、気体がグルッと一周して元の状態に戻ってくる「熱サイクル」と、そのサイクルを利用して熱エネルギーを継続的に仕事に変える夢の装置「熱機関(ねつきかん)」について、ガッツリ学んでいくぞ!
車のエンジン、発電所のタービン、冷蔵庫やエアコンの基本的な仕組みも、この熱サイクルと熱機関の考え方がベースになっているんだ。熱力学が、いかに我々の生活を支えているか、その核心に迫るエキサイティングな回だ!
【熱力学 第5講】熱を仕事に変える魔法! ~熱サイクルと熱効率の限界~
1.熱サイクル ~気体の終わらない旅~
熱サイクルとは、気体がいくつかの異なる状態変化(例えば、膨張 \( \rightarrow \) 冷却 \( \rightarrow \) 圧縮 \( \rightarrow \) 加熱)を経て、最終的にもとの状態に戻ってくる一連の過程のことだ。 \( P-V \)グラフで言うと、状態変化の線が閉じたループを描くことになる。
この熱サイクルにおいて、超重要なポイントが2つある!
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1サイクル後の内部エネルギーの変化 \( \Delta U_{\text{サイクル}} \) はゼロ! だって、元の状態に戻ってくるんだから、温度も元通り。理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるから、内部エネルギーも元に戻る。つまり、変化量はゼロだ! \( \bm{\Delta U_{\text{サイクル}} = 0} \)
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1サイクルで気体がした正味の仕事 \( W_{\text{サイクル}} \) 熱力学第一法則 \( \Delta U = Q - W \) を、この1サイクル全体に適用してみよう。 \( \Delta U_{\text{サイクル}} = Q_{\text{サイクル}} - W_{\text{サイクル}} \) \( \Delta U_{\text{サイクル}} = 0 \) だから、\( 0 = Q_{\text{サイクル}} - W_{\text{サイクル}} \) つまり、\( \bm{W_{\text{サイクル}} = Q_{\text{サイクル}}} \) となる! これはどういうことかと言うと、1サイクルで気体が外部にした正味の仕事は、そのサイクル中に気体が外部から吸収した正味の熱量に等しいってことだ。 \( P-V \)グラフで言うと、この \( W_{\text{サイクル}} \) は、サイクルが囲む閉じたループの面積に相当するんだ!(時計回りのサイクルなら気体は正の仕事をし、反時計回りなら負の仕事をする。)
2.熱機関 ~熱を仕事に変えるカラクリ~
この熱サイクルをうまく利用して、熱エネルギーの一部を継続的に仕事に取り出す装置のことを「熱機関(ねつきかん)」という。 蒸気機関、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ジェットエンジン、原子力発電所のタービン… みんなこの熱機関の仲間だ。
熱機関の基本的な仕組みはこうだ。
- 高温の熱源(例えば、燃料を燃やした熱や原子炉の熱)から、熱量 \( \bm{Q_{\text{in}}} \) (または \( Q_1 \) とも書く) を吸収する。
- 吸収した熱の一部を使って、外部に対して仕事 \( \bm{W} \) をする(ピストンを動かしたり、タービンを回したり)。
- 使い切れなかった残りの熱量 \( \bm{Q_{\text{out}}} \) (または \( Q_2 \) とも書く) を、低温の熱源(例えば、外気や冷却水)に放出する。
このとき、エネルギー保存則から、当たり前だけど、 \( \bm{Q_{\text{in}} = W + Q_{\text{out}}} \) という関係が成り立つ。吸収した熱が、仕事と捨てられた熱に分配されるわけだ。
3.熱効率 \( e \) ~どれだけムダなく仕事に変えられたか?~
熱機関の性能を表す大事な指標が「熱効率(ねつこうりつ)」だ。記号は \( e \)(またはギリシャ文字の \( \eta \) イータを使うこともある)。 これは、「吸収した熱量 \( Q_{\text{in}} \) のうち、どれだけの割合を仕事 \( W \) に変えることができたか」を示す。
定義式はこうだ! \( \Large{e = \frac{\text{した仕事}}{\text{吸収した熱}} = \frac{W}{Q_{\text{in}}}} \)
さっきのエネルギー保存の式 \( W = Q_{\text{in}} - Q_{\text{out}} \) を代入すると、 \( \Large{e = \frac{Q_{\text{in}} - Q_{\text{out}}}{Q_{\text{in}}} = 1 - \frac{Q_{\text{out}}}{Q_{\text{in}}}} \) とも書ける。
熱効率 \( e \) は、普通 \( 0 < e < 1 \) の値をとる。つまり、100%の熱効率 (\( e=1 \)) を持つ熱機関は存在しないんだ。吸収した熱をすべて仕事に変えることはできず、必ず一部の熱 \( Q_{\text{out}} \) は捨てられてしまう。これは、実は次に学ぶ「熱力学第二法則」っていう、もっと深遠な宇宙の法則と関わっているんだ。
4.夢のサイクル? カルノーサイクル
理論的に最も効率が良いとされる理想的な熱サイクルが「カルノーサイクル」だ。 これは、2つの「等温変化」と2つの「断熱変化」を巧みに組み合わせたサイクルなんだ。 このカルノーサイクルの熱効率 \( e_C \) は、高温熱源の絶対温度を \( T_H \)、低温熱源の絶対温度を \( T_L \) とすると、 \( \Large{e_C = 1 - \frac{T_L}{T_H}} \) と表される。なんと、作業物質(気体の種類とか)によらず、2つの熱源の温度だけで決まっちゃうんだ! そして、どんなに頑張って熱機関を作っても、このカルノーサイクルの効率を超えることは絶対にできない、っていうのが理論上の限界なんだ。
例題演習:熱サイクルを分析せよ!
問題: 「ある単原子分子理想気体が、図のようなA→B→C→Aのサイクルを行った。 A ( \( P_0, V_0 \)) \( \xrightarrow{\text{定圧変化}} \) B (\( P_0, 2V_0 \)) B (\( P_0, 2V_0 \)) \( \xrightarrow{\text{定積変化}} \) C (\( \frac{1}{2}P_0, 2V_0 \)) C (\( \frac{1}{2}P_0, 2V_0 \)) \( \xrightarrow{\text{Aに直線的に戻る}} \) A (\( P_0, V_0 \)) (1) 各状態点A, B, Cでの絶対温度を、\( P_0, V_0, n, R \) を用いて表せ。 (2) A→B、B→C、C→Aの各過程で気体がした仕事 \( W_{AB}, W_{BC}, W_{CA} \) と、吸収または放出した熱量 \( Q_{AB}, Q_{BC}, Q_{CA} \)、内部エネルギーの変化 \( \Delta U_{AB}, \Delta U_{BC}, \Delta U_{CA} \) をそれぞれ求めよ。 (3) このサイクルの1周で気体がした正味の仕事 \( W_{\text{サイクル}} \) と、このサイクルの熱効率 \( e \) を求めよ。」 (単原子分子理想気体の定積モル比熱を \( C_V = \frac{3}{2}R \)、定圧モル比熱を \( C_P = \frac{5}{2}R \) とする。)
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カリスマ講師の解法ナビ!
これは骨のある問題だけど、一つ一つ丁寧にやっていけば大丈夫だ!
(1) 各状態点の絶対温度 (理想気体の状態方程式 \( PV=nRT \) より \( T=PV/nR \)) * \( T_A = \frac{P_0 V_0}{nR} \) * \( T_B = \frac{P_0 (2V_0)}{nR} = \frac{2P_0 V_0}{nR} = 2T_A \) * \( T_C = \frac{(\frac{1}{2}P_0)(2V_0)}{nR} = \frac{P_0 V_0}{nR} = T_A \)
(2) 各過程の \( W, Q, \Delta U \) * A→B (定圧変化) * \( W_{AB} = P_0 (2V_0 - V_0) = P_0 V_0 \) (プラスの仕事) * \( \Delta U_{AB} = nC_V \Delta T_{AB} = n(\frac{3}{2}R)(T_B - T_A) = \frac{3}{2}nR(2T_A - T_A) = \frac{3}{2}nRT_A = \frac{3}{2}P_0V_0 \) * \( Q_{AB} = \Delta U_{AB} + W_{AB} = \frac{3}{2}P_0V_0 + P_0V_0 = \frac{5}{2}P_0V_0 \) (熱を吸収) (または \( Q_{AB} = nC_P \Delta T_{AB} = n(\frac{5}{2}R)T_A = \frac{5}{2}P_0V_0 \) でもOK)
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B→C (定積変化)
- \( W_{BC} = 0 \) (体積変化なし)
- \( \Delta U_{BC} = nC_V \Delta T_{BC} = n(\frac{3}{2}R)(T_C - T_B) = \frac{3}{2}nR(T_A - 2T_A) = -\frac{3}{2}nRT_A = -\frac{3}{2}P_0V_0 \)
- \( Q_{BC} = \Delta U_{BC} + W_{BC} = -\frac{3}{2}P_0V_0 + 0 = -\frac{3}{2}P_0V_0 \) (熱を放出)
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C→A (直線的な変化)
- \( W_{CA} \): これは\( P-V \)グラフ上の直線CAとV軸で囲まれた台形の面積だ。CからAへ体積が減少するので仕事はマイナス。 \( W_{CA} = \frac{1}{2}(P_C + P_A)(V_A - V_C) = \frac{1}{2}(\frac{1}{2}P_0 + P_0)(V_0 - 2V_0) = \frac{1}{2}(\frac{3}{2}P_0)(-V_0) = -\frac{3}{4}P_0V_0 \) (マイナスの仕事)
- \( \Delta U_{CA} = nC_V \Delta T_{CA} = n(\frac{3}{2}R)(T_A - T_C) = \frac{3}{2}nR(T_A - T_A) = 0 \) (温度変化なしなので内部エネルギー変化なし!)
- \( Q_{CA} = \Delta U_{CA} + W_{CA} = 0 + (-\frac{3}{4}P_0V_0) = -\frac{3}{4}P_0V_0 \) (熱を放出)
(3) 1サイクルの仕事 \( W_{\text{サイクル}} \) と熱効率 \( e \)
- \( W_{\text{サイクル}} = W_{AB} + W_{BC} + W_{CA} = P_0V_0 + 0 - \frac{3}{4}P_0V_0 = \boxed{\frac{1}{4}P_0V_0} \) (これは、\( P-V \)グラフ上で三角形ABCが囲む面積に等しい!)
- 吸収した熱量 \( Q_{\text{in}} \): このサイクルで熱を吸収しているのはA→Bの過程だけ。 \( Q_{\text{in}} = Q_{AB} = \frac{5}{2}P_0V_0 \)
- 熱効率 \( e = \frac{W_{\text{サイクル}}}{Q_{\text{in}}} = \frac{\frac{1}{4}P_0V_0}{\frac{5}{2}P_0V_0} = \frac{1/4}{5/2} = \frac{1}{4} \times \frac{2}{5} = \frac{2}{20} = \boxed{\frac{1}{10} \text{ (または 0.1、10%) }} \)
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どうだ!骨のある問題だったけど、一つ一つの変化を丁寧に追っていけば、必ず答えにたどり着ける!
熱力学第二法則への誘い ~宇宙の「流れ」の秘密~
熱効率が100%の熱機関は作れない、つまり吸収した熱をすべて仕事に変えることはできず、必ず一部は低温側に捨てられる。また、熱は自然には高温の物体から低温の物体にしか流れない。 こうした、自然現象が変化する向きにはある種の「不可逆性(一方通行性)」や「限界」があることを示唆するのが、「熱力学第二法則」なんだ。 この法則は、「エントロピー」っていう、ちょっと難しいけど宇宙の根本原理に関わる量を使って表現されたりもする。「乱雑さの度合いは自然に増える方向にしか変化しない」なんて言われたりするな。 高校物理ではこの法則に深くは踏み込まないことが多いけど、熱力学を理解する上で、そして宇宙の成り立ちを考える上でも、ものすごく重要な考え方なんだ。
ふぅー!今日の講義もアツく燃え尽きたな! 熱サイクル、熱機関、そして熱効率。これらの概念を理解すれば、なぜ永久機関が作れないのか、なんていう長年の人類の夢の謎にも迫ることができる。
最後に、君の熱力学エンジンをさらにパワーアップさせるための、最終ブースト問題だ! 1. 熱サイクルを1周したとき、気体の内部エネルギーの変化はいくらになるんだったっけ? その理由は? 2. ある熱機関の熱効率が \( 0.25 \) (つまり25%) だとする。この熱機関が高温の熱源から \( 800\mathrm{J} \) の熱を吸収したとき、外部にした仕事は何Jかな? そして、低温の熱源に放出した熱量は何Jかな? 3. 「熱は必ず高温の物体から低温の物体へ移動する」というのは、熱力学第一法則と第二法則、どっちの内容と深く関わっているかな?
次回は、この熱力学の学習のまとめとして、これまで学んだ法則を使ってさらに面白い問題を解いてみるか、あるいは君の希望があれば、いよいよ「波動」や「電磁気学」といった、また新たな物理の世界の扉を開けることになるかもしれない! 今日の熱い講義内容、しっかり復習して、次のステップに備えてくれよな!健闘を祈る!🔥