【第20講】揺れる世界のハーモニー! ~単振動の法則とバネの魔法~
最終更新日: 2025-07-08 04:40:10
作成者: カリスマ講師
前回は、物体がグルグルと円を描いて回る「等速円運動」と、その運動を引き起こす「向心力」について徹底的に学んだ。その最後に、君の理解度をさらにブーストするための確認問題を3つ出したよな。まずはその答え合わせで、今日の講義に向けて脳のコンディションを最高潮に持っていこう!
【前回の宿題解説】円運動の真髄、見抜けたか!?
質問1:「等速円運動をしている物体についてだ。速さの『大きさ』は一定だけど、速度の『向き』は変わるんだったよな。じゃあ、運動エネルギー \( K = \frac{1}{2}mv^2 \) は、運動の途中で変化するかな?しないかな? その理由は?」
- カリスマ講師の答え: 運動エネルギーは、変化しないんだ!
- 理由: 運動エネルギーの式 \( K = \frac{1}{2}mv^2 \) に入っている \( v \) は、「速さ」(スカラー量)のことだ。等速円運動では、その名の通り速さの「大きさ」はずっと一定。だから、運動エネルギーも一定に保たれるんだ。向きは変わっても、運動の勢い(エネルギー)自体は変わらないってわけだ。
質問2:「遊園地にある『回転ブランコ』。乗客が乗ったブランコが回転すると、ブランコは外側に開いて斜めになるよね。このとき、乗客が円運動をするための『向心力』の役割を果たしているのは、具体的にどんな力(あるいは力の成分)だろうか?」
- カリスマ講師の答え: 乗客が円運動をするための向心力は、ブランコの鎖(または棒)の張力の水平成分だ!
- 理由: 乗客には、鉛直下向きの「重力」と、鎖に沿って斜め上向き中心寄りの「張力」が働いている。この張力を、鉛直成分と水平成分に分解すると、鉛直成分が重力とつり合って乗客を空中に支え、水平成分がちょうど円運動の中心を向いて、乗客をグルグル回すための向心力として働いているんだ。
質問3:「円錐振り子の例題で、もし糸の長さ \( L \) を2倍にしたら、同じ角度 \( \theta \) で回転するときの周期 \( P_e \) は何倍になるかな? 式を見て考えてみよう!」
- カリスマ講師の答え: 周期 \( P_e \) は、\( \bm{\sqrt{2}} \) 倍(約1.414倍)になる!
- 理由: 円錐振り子の周期の公式は \( P_e = 2\pi \sqrt{\frac{L\cos\theta}{g}} \) だったよな。この式を見ると、周期 \( P_e \) は糸の長さ \( L \) の平方根に比例している。だから、\( L \) が2倍になれば、周期は \( \sqrt{2} \) 倍になるんだ。糸が長くなると、1周するのに時間がかかるようになるってことだな。
さあ、頭のウォーミングアップは完了だな! 円運動の奥深さ、その片鱗を感じ取ってくれたと思う。今日、我々が足を踏み入れるのは、その円運動と、まるで兄弟のように深い絆で結ばれている「単振動(たんしんどう)」の世界だ!
バネの先につけられたおもりがビヨーン、ビヨーンと揺れる動き。公園のブランコが左右に揺れる動き(振れ幅が小さいときね)。時計の振り子がカチ、コチと時を刻む動き。ギターの弦を弾いたときのブルブルッとした振動。これらは全部、単振動の仲間なんだ! 単振動は、自然界のあらゆる「振動」や「波」の現象を理解するための基本中の基本となる、ものすごーーーく重要な運動なんだぜ!
準備はいいか? リズムと周期が支配する、美しい単振動の世界へ、いざ出発だ!
【第20講】揺れる世界のハーモニー! ~単振動の法則とバネの魔法~
単振動 (Simple Harmonic Motion, SHM) とは? ~行ったり来たりの美学~
「単振動」とは、物体が、あるつり合いの位置(振動の中心)から行ったり来たりを繰り返す運動のことだ。 でも、ただ往復運動すれば何でも単振動ってわけじゃない。単振動には、特別な「力の条件」があるんだ。
それは、物体に働く力が、「つり合いの位置からの変位に比例し、常につり合いの位置へ向かう向き」であること! この、つり合いの位置に戻そうとする力のことを「復元力(ふくげんりょく)」という。 数式で書くと、復元力 \( F \) は、
\( \Large{F = -Kx} \)
と表される。ここで、
- \( x \):つり合いの位置からの変位(位置のずれ)
- \( K \):正の定数(比例定数。バネの場合は「ばね定数 \( k \)」になる)
- マイナス符号 (-):力の向きが、変位 \( x \) と常に逆向き(つまり、中心に戻そうとする向き)であることを示している。ここが超重要!
この復元力 \( F=-Kx \) を受けて運動する物体の運動方程式は、\( ma = F \) より、 \( ma = -Kx \) つまり、加速度 \( a \) は、 \( \Large{a = -\frac{K}{m}x} \) となる。加速度も、変位に比例して、向きが逆なんだな! ここで、\( \omega^2 = \frac{K}{m} \) (\( \omega \) はオメガと読む)と書くと、 \( \bm{a = -\omega^2 x} \) とスッキリ表せる。この \( \omega \) を「角振動数(かくしんどうすう)」という。円運動の角速度とそっくりだけど、単振動の場合は「角」と言っても実際に回っているわけじゃない。でも、周期との関係とか、数学的な扱いは円運動の角速度と非常によく似ているんだ。
単振動の様子を数式で表現! ~波打つサインカーブ~
単振動している物体の位置(変位 \( x \))、速度 \( v \)、加速度 \( a \) は、時間 \( t \) とともに周期的に変化する。その様子は、三角関数(サイン \( \sin \) やコサイン \( \cos \))を使うと、とってもキレイに表せるんだ。
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変位 \( x \): \( x = A \sin(\omega t + \phi) \) または \( x = A \cos(\omega t + \phi') \)
- \( A \):振幅(しんぷく)。振動の最大のずれ(中心から端までの距離)。
- \( \omega \):角振動数。\( \omega = \sqrt{K/m} \) で決まる、振動の「速さ」みたいなもの。
- \( (\omega t + \phi) \):位相(いそう)。振動の「タイミング」や「状態」を表す。
- \( \phi \) (ファイ) または \( \phi' \):初期位相(しょきいそう)。時刻 \( t=0 \) のときの振動の始まり方を決める。
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速度 \( v \): 変位 \( x \) を時間で微分すると(数学が得意な君はチャレンジしてみて!)、 \( v = A\omega \cos(\omega t + \phi) \)
- 速度の最大値 \( v_{max} = A\omega \) (これは、物体が振動の中心、つまり \( x=0 \) の位置を通過するときに現れる!)
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加速度 \( a \): 速度 \( v \) をさらに時間で微分すると、 \( a = -A\omega^2 \sin(\omega t + \phi) \) これって、\( x = A \sin(\omega t + \phi) \) を代入すると、\( a = -\omega^2 x \) となって、運動方程式とバッチリ一致するだろ!
- 加速度の最大値 \( a_{max} = A\omega^2 \) (これは、物体が振動の端、つまり \( x=\pm A \) の位置にあるときに現れる!)
単振動の周期 \( T \) と振動数 \( f \) ~リズムを刻む~
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周期 \( T \): 物体が1回振動して元の状態に戻るまでにかかる時間。 角振動数 \( \omega \) との関係は、円運動のときと同じで、 \( \Large{T = \frac{2\pi}{\omega}} \) これに \( \omega = \sqrt{K/m} \) を代入すると、単振動の周期の公式が出てくる! \( \Large{T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{K}}} \) 質量 \( m \) が大きいほど、また比例定数 \( K \) が小さい(復元力が弱い)ほど、周期は長くなる(ゆっくり振動する)ってことだ。
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振動数 \( f \): 1秒間に何回振動するか。周期 \( T \) の逆数だ。 \( f = \frac{1}{T} = \frac{\omega}{2\pi} = \frac{1}{2\pi}\sqrt{\frac{K}{m}} \) 単位は Hz (ヘルツ)。
円運動との深い関係 ~影が織りなす単振動~
「なんで単振動の式に、円運動で出てきた \( \omega \) とか三角関数が出てくるんだ?」って思ったかもしれない。 実は、等速円運動している物体を真横から見ると、その影の動きは単振動になるんだ!
半径 \( A \) の円周上を、角速度 \( \omega \) でグルグル回っている点を想像してくれ。 その点を、\( x \)軸(円の直径)に投影した影の動きを追いかけると、まさに \( x = A \cos(\omega t) \) (または \( \sin \)) という単振動の式で表される動きをするんだ! この「等速円運動の射影(しゃえい)」という考え方は、単振動の変位や速度、加速度の式を理解するのにめちゃくちゃ役立つぞ!
例題演習1:水平ばね振り子 ~バネのダンス~
問題: 「なめらかな水平面上に、質量 \( m = 0.50 \mathrm{kg} \) の物体が置かれ、ばね定数 \( k = 2.0 \mathrm{N/m} \) の軽いばねの一端に結ばれ、他端は壁に固定されている。物体をつり合いの位置(\( x=0 \))から右向きに \( A = 0.10 \mathrm{m} \) だけ引っ張って、静かに手を離したところ、物体は単振動を始めた。 (1) この単振動の角振動数 \( \omega \) と周期 \( T \) を求めよ。 (2) 物体が再びつり合いの位置(\( x=0 \))を通過するときの速さの最大値 \( v_{max} \) を求めよ。 (3) 物体の変位が \( x = 0.05 \mathrm{m} \) のときの、加速度の大きさ \( |a| \) を求めよ。」
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カリスマ講師の解法ナビ!
(1) 角振動数 \( \omega \) と周期 \( T \) ばね振り子の場合、復元力は \( F=-kx \) だから、単振動の式の \( K \) がばね定数 \( k \) にあたる。 角振動数 \( \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} = \sqrt{\frac{2.0}{0.50}} = \sqrt{4.0} = \boxed{2.0 \mathrm{rad/s}} \) 周期 \( T = \frac{2\pi}{\omega} = \frac{2\pi}{2.0} = \boxed{\pi \mathrm{s}} \) (約 \( 3.14 \) 秒だね)
(2) 速さの最大値 \( v_{max} \) 単振動の速さの最大値は、\( v_{max} = A\omega \) で与えられる。 \( v_{max} = (0.10 \mathrm{m})(2.0 \mathrm{rad/s}) = \boxed{0.20 \mathrm{m/s}} \) (これは、力学的エネルギー保存則を使っても求められるぞ! \( \frac{1}{2}kA^2 = \frac{1}{2}mv_{max}^2 \) からね!)
(3) \( x = 0.05 \mathrm{m} \) のときの加速度の大きさ \( |a| \) 単振動の加速度は \( a = -\omega^2 x \) で与えられる。 \( a = -(2.0 \mathrm{rad/s})^2 (0.05 \mathrm{m}) = -(4.0)(0.05) = -0.20 \mathrm{m/s^2} \) 加速度の「大きさ」を聞かれているから、絶対値をとって \( \boxed{|a| = 0.20 \mathrm{m/s^2}} \) だ。 (このときの力の向きは、変位と逆向き、つまり中心向き(左向き)だね。)
例題演習2:単振り子 ~揺れる重力のメロディー~ (振れ角が小さい場合)
時計の振り子みたいに、糸の先におもりを吊るして揺らすやつだ。 実は、この単振り子の振れ角 \( \theta \) が非常に小さいとき、その運動は単振動とみなせるんだ!
- 復元力: おもりが最下点から水平方向に微小変位 \( x \) だけずれたとき、おもりに働く重力の分力が、おもりを中心に戻そうとする復元力となる。その大きさは(\( \theta \)が小さいとき \( \sin\theta \approx \theta \approx x/L \) を使うと) \( F \approx -mg\frac{x}{L} = -\left(\frac{mg}{L}\right)x \) となる。 つまり、\( K = \frac{mg}{L} \) に相当する!
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周期 \( T \): 単振動の周期の公式 \( T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{K}} \) に、\( K = \frac{mg}{L} \) を代入すると…
\( \Large{T = 2\pi \sqrt{\frac{m}{mg/L}} = 2\pi \sqrt{\frac{L}{g}}} \) なんと!単振り子の周期は、おもりの質量 \( m \) には関係ないんだ!糸の長さ \( L \) と重力加速度 \( g \) だけで決まる。不思議だけど、これが物理の法則だ!(ただし、振れ角が小さいという条件付きだぞ)
単振動とエネルギー保存
単振動では、復元力(バネの力や、単振り子の場合は重力の分力)は保存力だ。だから、単振動している物体の力学的エネルギー \( E = K + U = \frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}Kx^2 \) は保存されるんだ! エネルギーは、運動エネルギーになったり、位置エネルギー(バネの場合は弾性エネルギー)になったりしながら、その合計値は常に一定に保たれる。 例えば、振動の端っこ (\( x=\pm A \)) では、速さ \( v=0 \) なので運動エネルギーはゼロ、位置エネルギーが最大 (\( U_{max} = \frac{1}{2}KA^2 \)) となる。 逆に、振動の中心 (\( x=0 \)) では、位置エネルギーはゼロ(または最小)、速さ \( v \) が最大 (\( v_{max} \)) なので運動エネルギーが最大 (\( K_{max} = \frac{1}{2}mv_{max}^2 \)) となる。 そして、常に \( E = \frac{1}{2}KA^2 = \frac{1}{2}mv_{max}^2 \) が成り立っているんだ。
ふぅーっ!今日の講義も魂を揺さぶる内容だったな!単振動という、周期的運動の基本形をマスターすれば、波の性質を理解する上でものすごく役立つぞ! 復元力、角振動数、周期、そして円運動との美しい関係。一つ一つじっくりと味わってほしい。
最後に、君の脳に単振動のリズムを刻み込むための、最終セッションだ! 1. 単振動している物体が、振動の中心(つり合いの位置、x=0)を通過するとき、物体の速度は最大?最小?それともゼロ? 加速度はどうかな? 2. 水平ばね振り子の周期 \( T = 2\pi \sqrt{m/k} \)。もし、おもりの質量 \( m \) を4倍にしたら、周期 \( T \) は何倍になるかな? もし、ばね定数 \( k \) を4倍(もっと硬いバネ)にしたら、周期 \( T \) は何倍になるかな? 3. 単振り子の周期は、おもりの質量によらないんだったよな。じゃあ、同じ長さの単振り子を、地球上と月面上(月面では重力加速度が地球の約1/6)で振らせたら、周期はどっちが長くなると思う? その理由は?
次回は、この単振動のエネルギーについてもう少し詳しく見ていくか、あるいは力学の総まとめとして、まだ触れていない重要なトピック「万有引力とケプラーの法則」に進むか、はたまた、いよいよ新しい分野「熱力学」や「波動」の世界の扉を開くか… 君の熱意と理解度に応じて、最高のコースを選んでいくぜ! それじゃ、また次回!今日の振動、しっかり体に染み込ませておけよ!健闘を祈る!🎶