【前回の宿題解説】水平投射のナゾ、解き明かせたか!?
最終更新日: 2025-06-05 11:07:38
作成者: カリスマ講師
前回は「水平投射」っていう、物体を真横に投げ出す運動について学んだ。その最後に投げかけた鋭い質問、覚えているか?まずはその答え合わせから、バシッと決めていこうぜ!
【前回の宿題解説】水平投射のナゾ、解き明かせたか!?
質問1:「同じ高さの崖から、A君はボールを初速度 \( v_0 \) で水平に投げた。B君はボールを初速度 \( 2v_0 \) で水平に投げた。地面に先に着くのはどっち?」
- カリスマ講師の答え: なんと!A君もB君も、同時に地面に着くんだ!
- 解説: 水平投射された物体が地面に落ちるまでの時間は、鉛直方向の運動(つまり自由落下)だけで決まるんだったよな。数式で言うと、\( t_f = \sqrt{\frac{2H}{g}} \)。この式の中に、水平方向の初速度 \( v_0 \) はどこにも入ってないだろ? だから、いくら水平方向の初速度が違っても、高さが同じなら地面に到着する時間は同じなんだ。B君のボールの方がうんと遠くまで飛んでいくけど、着地時間は変わらない。これぞ物理の面白いところだ!
質問2:「水平投射された物体の軌跡は放物線だったけど、もし重力がなかったら(例えば宇宙空間で)、物体はどんな軌跡を描くと思う?」
- カリスマ講師の答え: もし重力がなければ、物体は「等速直線運動」をする!つまり、投げ出された瞬間の速度のまま、まっすぐスーッと進んでいくんだ。
- 解説: 物体がカーブを描くのは、重力っていう下向きの力が働いて、鉛直方向の速度を変化させるからだよな。もしその重力がなければ、鉛直方向の速度はずっとゼロのまま。水平方向にはもともと力が働いていないから、初速度 \( v_0 \) のまま進み続ける。結果として、投げ出された方向にまっすぐ進んでいくってわけだ。シンプルだけど、大事なポイントだぜ!
さあ、頭もスッキリしたところで、いよいよ放物運動のラスボス(!?)に挑戦だ! 前回が「真横」なら、今回は「斜め上」!そう、「斜方投射(しゃほうとうしゃ)」だ! サッカーの華麗なループシュート、野球の大きなホームランアーチ、これらはみんな斜方投射の仲間だぜ!
【第8講】大空へのアーチ! ~斜方投射を制覇せよ!~
「斜方投射」っていうのは、物体を地面からある角度(これを仰角 (ぎょうかく) っていうぞ!)をつけて、初速度 \( v_0 \) で斜め上に投げ上げる運動のことだ。
この運動も、攻略の合言葉はやっぱり「分解」! 水平方向と鉛直方向に分けて考えるんだ。
1.最初が肝心! 初速度を分解せよ!
物体を、水平面から角度 \( \theta \) (シータ) の向きに、速さ \( v_0 \) で投げ上げたとしよう。 この斜め向きの初速度 \( v_0 \) を、水平方向の成分 \( v_{0x} \) と、鉛直方向の成分 \( v_{0y} \) に分解するんだ。 三角関数を覚えているかな? 直角三角形をイメージするとわかりやすいぞ。
- 水平方向の初速度成分: \( v_{0x} = v_0 \cos\theta \)
- 鉛直方向の初速度成分: \( v_{0y} = v_0 \sin\theta \)
これが全ての始まりだ! この分解さえできれば、あとはそれぞれの方向で運動を見ていけばいい。
2.それぞれの方向の運動を見てみよう!
A) 水平方向 (\( x \)方向) の運動
- 初速度:\( v_{0x} = v_0 \cos\theta \)
- 加速度:\( a_x = 0 \) (水平投射のときと同じ!空気抵抗がなければ、水平方向には力が働かないからね)
- 時刻 \( t \) での速度:\( v_x = v_0 \cos\theta \) (ずーっと一定!等速直線運動だ)
- 時刻 \( t \) での変位(水平に進んだ距離):\( x = (v_0 \cos\theta) t \)
B) 鉛直方向 (\( y \)方向) の運動 (ここでは、鉛直上向きを正とするよ!)
- 初速度:\( v_{0y} = v_0 \sin\theta \)
- 加速度:\( a_y = -g \) (鉛直投げ上げのときと同じ!重力は下向きだからマイナスだ)
- 時刻 \( t \) での速度:\( v_y = v_0 \sin\theta - gt \)
- 時刻 \( t \) での変位(鉛直方向の高さ):\( y = (v_0 \sin\theta) t - \frac{1}{2}gt^2 \)
どうだ? 水平方向は等速直線運動、鉛直方向は鉛直投げ上げ。もう君たちが一度は学んだ運動の組み合わせになっているのがわかるだろ!
3.斜方投射の重要ポイントを押さえろ!
この運動には、いくつか超重要なポイントがある。テストにもよく出るから、しっかりマスターしよう!
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最高点に注目!
- 鉛直方向の運動は鉛直投げ上げと同じだから、いつか最高点に達する。
- 最高点では、鉛直方向の速度 \( v_y \) が一瞬だけゼロになる! (\( v_y = 0 \))
- 最高点に達するまでの時間 \( t_1 \) は、\( 0 = v_0 \sin\theta - gt_1 \) を解いて、\( t_1 = \frac{v_0 \sin\theta}{g} \)
- 最高点の高さ \( H \) は、\( v_y^2 - v_{0y}^2 = 2a_y H \) の公式に \( v_y=0 \)、\( v_{0y}=v_0\sin\theta \)、\( a_y=-g \) を代入して、\( 0^2 - (v_0 \sin\theta)^2 = 2(-g)H \) から、\( H = \frac{(v_0 \sin\theta)^2}{2g} \)
- 注意! 最高点でも、水平方向の速度 \( v_x = v_0 \cos\theta \) は消えずに残っているからな!物体は横には進み続けているんだ。
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どこまで飛ぶ? 水平到達距離 \( R \)
- 投げた物体が再び地面(同じ高さ \( y=0 \))に戻ってくるまでの時間を \( T \) とする。
- 鉛直方向の変位の式 \( y = (v_0 \sin\theta) t - \frac{1}{2}gt^2 \) で \( y=0 \) とおくと、 \( 0 = t \left( (v_0 \sin\theta) - \frac{1}{2}gt \right) \) この式から、\( t=0 \) (投げた瞬間) と \( T = \frac{2v_0 \sin\theta}{g} \) (地面に戻ったとき) が求まる。 この \( T \)、よく見ると最高点までの時間 \( t_1 \) のちょうど2倍になっている!ここでも対称性が美しい!
- この時間 \( T \) の間に、水平方向には \( x = (v_0 \cos\theta) t \) で進むから、水平到達距離 \( R \) は、 \( R = (v_0 \cos\theta) T = (v_0 \cos\theta) \left(\frac{2v_0 \sin\theta}{g}\right) = \frac{2v_0^2 \sin\theta \cos\theta}{g} \)
- ここで三角関数の倍角の公式 \( 2\sin\theta\cos\theta = \sin(2\theta) \) を使うと、もっとスッキリ! \( \boxed{R = \frac{v_0^2 \sin(2\theta)}{g}} \)
- この式から、同じ初速度 \( v_0 \) で投げるなら、\( \sin(2\theta) \) が最大値 1 になるとき、つまり \( 2\theta = 90^\circ \implies \theta = 45^\circ \) のときに、水平到達距離 \( R \) が最大になるってことがわかるんだ!遠くに飛ばしたかったら、45度で投げろってことだな!
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**軌跡の式はやっぱり…
** 時間 \( t \) を消去して \( x \) と \( y \) の関係式を作ると(計算はちょっと大変だけど… )、 \( y = (\tan\theta)x - \frac{g}{2(v_0 \cos\theta)^2}x^2 \) これも \( x^2 \) の項があるから、やっぱり放物線になるんだ!
4.例題で腕試し!
さあ、実際に問題を解いてみよう!
例題: 「地面から、水平方向と \( 30^\circ \) の角をなす向きに、初速度 \( 19.6 \mathrm{m/s} \) でボールを投げ上げた。 (1) 最高点に達するまでの時間 \( t_1 \) と、その高さ \( H \) を求めよ。 (2) 地面に再び落下するまでの時間 \( T \) と、水平到達距離 \( R \) を求めよ。 ただし、重力加速度の大きさを \( g = 9.8 \mathrm{m/s^2} \) とし、\( \sin30^\circ = 0.50 \)、\( \cos30^\circ = 0.866 \)(ルートを使わずに近似値でOK)とする。」
- カリスマ講師の解き方ナビ!
- 初速度を分解! \( v_0 = 19.6 \mathrm{m/s} \)、\( \theta = 30^\circ \) \( v_{0x} = v_0 \cos30^\circ = 19.6 \times 0.866 \approx 16.97 \mathrm{m/s} \) \( v_{0y} = v_0 \sin30^\circ = 19.6 \times 0.50 = 9.8 \mathrm{m/s} \)
- (1) 最高点について
- 時間 \( t_1 = \frac{v_{0y}}{g} = \frac{9.8}{9.8} = 1.0 \mathrm{s} \)
- 高さ \( H = \frac{v_{0y}^2}{2g} = \frac{(9.8)^2}{2 \times 9.8} = \frac{9.8}{2} = 4.9 \mathrm{m} \)
- (2) 地面への落下と水平到達距離
- 時間 \( T = 2t_1 = 2 \times 1.0 = 2.0 \mathrm{s} \)
- 水平到達距離 \( R = v_{0x} T = 16.97 \times 2.0 \approx 33.94 \mathrm{m} \) (または \( R = \frac{v_0^2 \sin(2\theta)}{g} = \frac{(19.6)^2 \sin(60^\circ)}{9.8} \)。\( \sin60^\circ = \cos30^\circ \approx 0.866 \) なので、\( R = \frac{19.6 \times 19.6 \times 0.866}{9.8} = 2 \times 19.6 \times 0.866 \approx 33.94 \mathrm{m} \))
計算が多くて大変だけど、一つ一つ丁寧にやっていけば必ず解ける!
ふぅー!今日の講義はここまで!斜方投射、手強かったけど、これで君もボールの軌跡を予測できるようになったはずだ!
最後に、今日の理解を深めるための宿題だ! 1. 斜方投射で、ボールがまさに最高点にあるとき、ボールの速度はゼロだろうか? それとも、ある値を持っているだろうか? 持っているとしたら、それはどの方向の速度かな? 2. 同じ初速度でボールを投げるとき、一番遠くに飛ばせる角度は45°だったね。では、例えば30°で投げたときと60°で投げたとき、水平到達距離はどっちが長くなると思う?あるいは同じ?(ヒント:\( R = \frac{v_0^2 \sin(2\theta)}{g} \) の式をよく見てみよう!)
これで、物体の運動を記述する「運動学」の主要な部分はだいたいカバーしたことになる。 次回からは、いよいよ「なぜ物体はそのように運動するのか?」という、運動の原因である「力」に焦点を当てていくぞ!物理学の超重要人物、ニュートンが登場する「運動の法則」の世界だ!ワクワクするだろ? それじゃあ、また次回!しっかり復習しておいてくれよな!💪