【前回の宿題解説】仕事とエネルギー、その神髄を見抜け!
最終更新日: 2025-06-05 11:33:52
作成者: カリスマ講師
前回は、「仕事」と「運動エネルギー」、そしてそれらを結びつける超強力な「仕事とエネルギーの定理」について学んだ。その最後に、君の理解度を測るためのミッションを3つ出したよな。まずはその答え合わせで、今日の講義に向けてウォーミングアップだ!
【前回の宿題解説】仕事とエネルギー、その神髄を見抜け!
質問1:「君がカバンを肩にかけて、水平な廊下を一定の速さで歩いているとする。このとき、君がカバンを持ち上げている鉛直上向きの力は、カバンに対して仕事をしているかな? していないかな? その理由は?」
- カリスマ講師の答え: この場合、君がカバンを持ち上げている鉛直上向きの力は、カバンに対して仕事をしていない!
- 理由: 仕事の定義 \( W = Fx \cos\theta \) を思い出してくれ。力の向き(鉛直上向き)と、カバンの移動の向き(水平)は垂直だよね? つまり、角度 \( \theta = 90^\circ \)。そして \( \cos90^\circ = 0 \) だから、仕事 \( W = Fx \times 0 = 0 \mathrm{J} \) となる。どんなに重いカバンを持っていても、水平に移動するだけなら、持ち上げる力自体は仕事をしていないんだ。面白いだろ?
質問2:「同じ質量の車Aと車Bがある。車Aが車Bの2倍の速さで走っているとき、車Aの運動エネルギーは車Bの運動エネルギーの何倍になっているかな?」
- カリスマ講師の答え: 車Aの運動エネルギーは、車Bの運動エネルギーの4倍になる!
- 理由: 運動エネルギーの公式 \( K = \frac{1}{2}mv^2 \) を見てくれ。運動エネルギーは速さ \( v \) の2乗に比例するんだ。 だから、速さが2倍になると、運動エネルギーは \( 2^2 = 4 \) 倍になる。速さが3倍なら \( 3^2 = 9 \) 倍だ。スピード違反がいかに危険か、エネルギーの観点からもわかるよな!
質問3:「物体にプラスの仕事をすると、その物体の運動エネルギーはどうなるのが一般的かな?(増える?減る?変わらない?)」
- カリスマ講師の答え: 物体にプラスの仕事をすると、その物体の運動エネルギーは一般的に増える!
- 理由: 「仕事とエネルギーの定理」 \( W_{\text{net}} = \Delta K \) を思い出そう。\( W_{\text{net}} \) がプラスということは、運動エネルギーの変化 \( \Delta K = K_f - K_i \) もプラスだ。つまり、\( K_f > K_i \) となって、運動エネルギーが増加するってことだ。エネルギーを注入されたイメージだな!
さあ、ウォーミングアップはバッチリだな! 前回は「動き」のエネルギーである運動エネルギーと、それを変化させる「仕事」について学んだ。今日は、エネルギーファミリーのもう一人の超重要メンバー、「位置エネルギー」について徹底的に解説していくぞ! そして、この運動エネルギーと位置エネルギーを合わせたものが、物理学の美しい法則の一つ「力学的エネルギー保存則」へと繋がっていくんだ。今日の講義も、君の物理の世界をガラリと変えるぞ!
【第15講】高さとバネに秘められた力! ~位置エネルギーと力学的エネルギー保存則~
位置エネルギー (Potential Energy) ~"可能性"を秘めたエネルギー~
「位置エネルギー」ってのは、その名の通り、物体が「ある位置にある」ことによって、あるいは「ある状態にある」ことによって蓄えられているエネルギーのことだ。「ポテンシャルエネルギー」なんて呼ばれたりもする。「ポテンシャルが高い」ってのは「可能性を秘めている」って意味だよな!
運動エネルギーが物体の「動き」そのものに関連するエネルギーだったのに対して、位置エネルギーは、物体が力を及ぼし合う他の物体との配置によって決まるエネルギーなんだ。 そして、この位置エネルギーが定義できるのは、主に「保存力」っていう特別な力が働く場合なんだ。
- 保存力とは?: 仕事をするときに、その仕事量が途中の経路によらず、始めと終わりの位置だけで決まるような力のこと。代表選手は重力やバネの弾性力だ。
- 非保存力とは?: 仕事が経路に依存する力のこと。代表選手は摩擦力や空気抵抗。こいつらが仕事をすると、エネルギーが熱とかになって逃げちゃうことが多い。
さあ、まずは代表的な位置エネルギーを2つ見ていこう!
1.重力による位置エネルギー \( U_g \) ~高いところはエネルギーが高い!~
物体が地面から高いところにあると、手を離せば勝手に下に落ちてきて、スピードを増すよね? つまり、高いところにある物体は、動き出す「可能性」を秘めている。これが重力による位置エネルギーだ。
質量 \( m \) の物体を、基準の高さから \( h \) だけゆっくりと持ち上げる場面を想像してみよう。 このとき、少なくとも重力 \( mg \) に逆らうだけの力を上向きに加え続ける必要がある。 その力で距離 \( h \) だけ持ち上げたのだから、君が物体にした仕事は \( W_{\text{外力}} = (\text{力}) \times (\text{距離}) = (mg) \times h = mgh \) だ。 この君がした仕事の分だけ、物体はエネルギーを蓄えたと考える。これが重力による位置エネルギーだ!
\( \Large{U_g = mgh} \)
ここで、
- \( m \):物体の質量 (\( \mathrm{kg} \))
- \( g \):重力加速度 (\( \mathrm{m/s^2} \))
- \( h \):基準面からの高さ (\( \mathrm{m} \))
超重要ポイント! 基準面(高さゼロの面)は、問題を解く人が自由に設定していいんだ。地面を基準にしてもいいし、机の面を基準にしてもいい。ただし、一度決めたら問題の途中で変えちゃダメだぞ。 基準面では \( h=0 \) だから、当然 \( U_g = 0 \) になる。
重力がする仕事と位置エネルギーの関係 物体が高いところから低いところに落ちるとき、重力はプラスの仕事をするよね?(力の向きと移動の向きが同じだから)。このとき、物体の位置エネルギーは減少する。 逆に、物体を低いところから高いところに持ち上げるとき、重力はマイナスの仕事をする(力の向きと移動の向きが逆だから)。このとき、物体の位置エネルギーは増加する。 一般的に、重力がする仕事 \( W_g \) と、重力による位置エネルギーの変化 \( \Delta U_g = U_{g,後} - U_{g,前} \) の間には、 \( \bm{W_g = -(U_{g,後} - U_{g,前}) = -\Delta U_g} \) という関係があるんだ。
2.弾性力による位置エネルギー \( U_s \) (または \( U_e \)) ~伸びたバネはエネルギーの塊!~
バネをグーッと伸ばしたり、ギュッと縮めたりすると、手を離したときに勢いよく元に戻ろうとするよね? これも、変形したバネがエネルギーを蓄えている証拠だ。これを弾性力による位置エネルギー(または単に弾性エネルギー)という。
自然の長さ(何も力を加えていないときの長さ)のバネを、 \( x \) だけゆっくりと伸ばす(または縮める)のに必要な仕事を考えてみよう。 バネの力(弾性力)は、フックの法則に従って \( F_{\text{バネ}} = kx \) だったな(\( k \) はばね定数)。 バネを伸ばすには、このバネの力に逆らって、同じ大きさの力を加え続ける必要がある。でも、この力は最初 \( x=0 \) のときはゼロで、だんだん大きくなって、最後に \( x \) だけ伸びたときには \( kx \) になる。 こういう風に力が変化する場合の仕事は、単純な(力)×(距離)では求められないんだけど、結果だけ言うと(詳しくは \( F-x \) グラフの面積や積分を使うんだけど、今は結果を信じてくれ!)、
\( \Large{U_s = \frac{1}{2}kx^2} \)
これが、ばね定数 \( k \) のバネが、自然の長さから \( x \) だけ変形したときに蓄える弾性力による位置エネルギーだ。
- \( k \):ばね定数 (\( \mathrm{N/m} \))
- \( x \):バネの自然の長さからの伸びまたは縮み (\( \mathrm{m} \))
特徴!
- \( x \) が大きいほど(つまり、たくさん伸びたり縮んだりしているほど)、エネルギーは大きくなる(\( x \) の2乗に比例!)。
- バネが自然の長さのとき (\( x=0 \)) は、弾性エネルギーはゼロだ。
弾性力がする仕事と位置エネルギーの関係 重力のときと同じように、弾性力がする仕事 \( W_s \) と、弾性力による位置エネルギーの変化 \( \Delta U_s = U_{s,後} - U_{s,前} \) の間には、 \( \bm{W_s = -(U_{s,後} - U_{s,前}) = -\Delta U_s} \) という関係があるんだ。
力学的エネルギー (Mechanical Energy) \( E \) ~運動と位置のエネルギーの合計!~
さあ、主役たちが揃ったぞ! 物体の運動エネルギー \( K \) と、位置エネルギー \( U \)(重力によるもの \( U_g \) や弾性力によるもの \( U_s \) など)を全部ひっくるめたものを、力学的エネルギー \( E \) と呼ぶんだ!
\( \Large{E = K + U} \)
具体的には、
- 重力だけを考える場合: \( E = \frac{1}{2}mv^2 + mgh \)
- バネだけを考える場合: \( E = \frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}kx^2 \)
- 重力もバネもある場合: \( E = \frac{1}{2}mv^2 + mgh + \frac{1}{2}kx^2 \)
って感じだ。
力学的エネルギー保存則 ~エネルギーは姿を変えるだけ!~
さあ、今日のクライマックスだ!物理学の中でも特に美しくて、そしてめちゃくちゃ強力な法則の一つ、「力学的エネルギー保存則」の登場だ!
その内容は…
「物体に働く力が保存力(重力や弾性力など)だけである場合、その物体の力学的エネルギー \( E = K+U \) は、運動の途中で常に一定に保たれる。」
つまり、運動エネルギーが減ればその分だけ位置エネルギーが増え、位置エネルギーが減ればその分だけ運動エネルギーが増える。まるでシーソーみたいに、エネルギーの種類は変わるけど、その合計値は変わらないってことだ!
\( \Large{K_1 + U_1 = K_2 + U_2 \quad (\text{始めの力学的エネルギー} = \text{終わりの力学的エネルギー})} \) または、\( \Delta E = 0 \) とも書ける。
もし摩擦や空気抵抗(非保存力)が仕事をしたら? 残念ながら、摩擦力や空気抵抗みたいな「非保存力」が仕事をすると、力学的エネルギーの一部が熱エネルギーとかに変わって失われてしまう。この場合、力学的エネルギーは保存されない。 そのときの関係は、 「始めの力学的エネルギー」+「非保存力がした仕事」=「終わりの力学的エネルギー」 \( \Large{E_1 + W_{\text{非保存力}} = E_2} \) または、 \( \Large{\Delta E = W_{\text{非保存力}}} \) と書ける。摩擦力が仕事をすると \( W_{\text{非保存力}} \) は普通マイナスだから、力学的エネルギーは減ってしまうんだ。
例題で体感!ジェットコースターの魔法!
問題: 「高さ \( H \) の滑らかな(摩擦がない)斜面の一番上から、質量 \( m \) の物体をそっと(初速度ゼロで)滑らせた。物体が斜面の一番下に達したときの速さ \( v \) を求めよ。重力加速度の大きさを \( g \) とする。」
- カリスマ講師の解法ナビ!
- 始めの状態と終わりの状態を設定
- 始め:斜面の上端。速さ \( v_1=0 \)、高さ \( h_1=H \)(地面を基準 \( h=0 \) とする)。
- 終わり:斜面の下端。速さ \( v_2=v \)(求めたい!)、高さ \( h_2=0 \)。
- 働く力を確認 物体に働くのは、重力と、斜面からの垂直抗力だけだ。 重力は保存力。垂直抗力は、常に物体の運動方向と垂直なので、仕事をしない! ということは…
- 始めの状態と終わりの状態を設定
そう!力学的エネルギーが保存されるんだ! 3. 力学的エネルギー保存則の式を立てる \( K_1 + U_{g1} = K_2 + U_{g2} \) \( \frac{1}{2}m v_1^2 + mgh_1 = \frac{1}{2}m v_2^2 + mgh_2 \) 値を代入すると…
\frac{1}{2}m (0)^2 + mgH = \frac{1}{2}m v^2 + mg(0) 0 + mgH = \frac{1}{2}mv^2 + 0 4. **速さ v を求める** mgH = \frac{1}{2}mv^2 両辺の m を消して、gH = \frac{1}{2}v^2 v^2 = 2gH よって、\boxed{v = \sqrt{2gH}} どうだ! あっという間に答えが出ただろ? 途中の加速度とか、斜面の角度とか一切考えずに、始めと終わりのエネルギーだけで解けちまうんだ。これがエネルギーの力だ! しかも、この結果は物体の質量 m にもよらない!羽毛だろうが鉄球だろうが(空気抵抗がなければ)、同じ高さから滑らせれば同じ速さになるってことだ!
今日の講義はここまでだ!位置エネルギー、そして力学的エネルギー保存則、その強力さと美しさを感じてくれたかな? エネルギーの考え方をマスターすれば、解ける問題の幅がグーンと広がるぞ!
最後に、今日の学びが君の血肉となるための、スペシャルな問いを投げかけよう! 1. 重力による位置エネルギーの基準面はどこに取ってもいいんだったよね? もし基準面を変えたら、計算される位置エネルギーの値は変わるけど、力学的エネルギー保存則を使って速さなどを求めるとき、最終的な答えに影響はあるかな?ないかな? その理由は? 2. 遊園地のジェットコースターが、一番高いところからスタートして、その後エンジンなどを使わずに(摩擦や空気抵抗も無視できるとして)コースを走り抜けるとする。一番スピードが出るのは、コースのどの地点だと思う? それは、力学的エネルギー保存則でどう説明できる? 3. もし、摩擦があるザラザラの坂道を物体が滑り落ちたら、その物体の「力学的エネルギー」はどうなると思う?(増える?減る?変わらない?)その理由は?
次回は、この力学的エネルギー保存則を使った、もっと色々なパターンの問題演習をやっていくぞ!バネが出てきたり、円運動と組み合わせたり… 面白くて歯ごたえのある問題が待っているからな! それじゃ、また次回!エネルギー満タンで臨んでくれよな!健闘を祈る!✨