【第17講】ぶつかる衝撃の正体! ~運動量と力積、そして保存の法則~
最終更新日: 2025-06-05 11:30:52
作成者: カリスマ講師
運動量 (Momentum) \( \vec{p} \) ~動きの勢いを表す量~
まず、「運動量」ってのは、その名の通り「運動の勢い」を表す物理量だ。 質量 \( m \) の物体が速度 \( \vec{v} \) で運動しているとき、その運動量 \( \vec{p} \) は、
\( \Large{\vec{p} = m\vec{v}} \)
と定義される。
- ベクトル量だ!: 運動量は、速度と同じ向きを持つベクトル量だ。だから、向きもちゃんと考える必要があるぞ。
- 単位: 質量の単位 (\( \mathrm{kg} \)) と速度の単位 (\( \mathrm{m/s} \)) を掛け合わせた、\( \mathrm{kg \cdot m/s} \) となる。
- 意味: 直感的には、「どれだけ止めにくいか」の指標みたいなもんだ。同じ速さでも、軽自動車より大型トラックの方が止めるのが大変だろ?それはトラックの方が質量が大きくて、運動量も大きいからなんだ。
ニュートンの第2法則、実は運動量で書ける! 実は、ニュートンが最初に運動の法則を考えたとき、第2法則は「力の合力は、運動量の時間変化の割合に等しい」っていう形で表現されていたんだ。 \( \Large{\vec{F}{\text{合力}} = \frac{\Delta \vec{p}}{\Delta t}} \) もし質量 \( m \) が一定なら、\( \Delta \vec{p} = \Delta (m\vec{v}) = m \Delta \vec{v} \) となるから、 \( \vec{F} \) となって、我々がよく知る運動方程式 \( m\vec{a} = \vec{F}_{\text{合力}} \) と同じになるんだ!}} = m \frac{\Delta \vec{v}}{\Delta t} = m\vec{a
力積 (Impulse) \( \vec{I} \) ~力が与える「衝撃」の量~
次に「力積」だ。これは、力が物体に与える「衝撃の大きさ」を表す物理量だと思えばいい。 物体に一定の力 \( \vec{F} \) が、短い時間 \( \Delta t \) だけ作用したとき、その力が物体に与える力積 \( \vec{I} \) は、
\( \Large{\vec{I} = \vec{F} \Delta t} \)
と定義される。
- ベクトル量だ!: 力積は、力と同じ向きを持つベクトル量だ。
- 単位: 力の単位 (\( \mathrm{N} \)) と時間の単位 (\( \mathrm{s} \)) を掛け合わせた、\( \mathrm{N \cdot s} \) となる。 実はこの \( \mathrm{N \cdot s} \) という単位、\( \mathrm{kg \cdot m/s^2 \cdot s} = \mathrm{kg \cdot m/s} \) となって、運動量の単位と全く同じなんだ!これは偶然じゃないぞ。
もし力が時間的に変化する場合は、その力のグラフ(縦軸が力 \( F \)、横軸が時間 \( t \))を描いたときの、グラフと時間軸で囲まれた「面積」が力積を表すことになる(これは積分の考え方だな)。
力積と運動量の関係(運動量変化) ~衝撃が運動を変える!~
さあ、運動量と力積、この二つを結びつける超重要な関係が出てくるぞ! ニュートンの第2法則を運動量で書いた式 \( \vec{F}{\text{合力}} = \frac{\Delta \vec{p}}{\Delta t} \) の両辺に \( \Delta t \) を掛けてみよう。 \( \vec{F} \) 左辺はまさに力積 \( \vec{I} \) だ!そして右辺 \( \Delta \vec{p} \) は運動量の変化 (\( \vec{p}}} \Delta t = \Delta \vec{p{\text{後}} - \vec{p} \)) だ! つまり!}
\( \Large{\vec{I} = \Delta \vec{p}} \) 「物体が受けた力積は、その物体の運動量の変化に等しい」
これが力積と運動量の関係(運動量変化の原理)だ! 例えば、バットでボールを打つとき、バットがボールに与える力積が大きいほど、ボールの運動量は大きく変化する(つまり、速い打球になる)。
運動量保存則 ~ぶつかっても合計は変わらない!?~
今日のメインイベント!「運動量保存則」だ! これは、力学的エネルギー保存則と並んで、物理学で最も強力な保存則の一つだ。
考えてみよう。物体Aと物体Bが衝突する場面を想像してくれ。 衝突の間、AはBから力 \( \vec{F}{BA} \) を受け、BはAから力 \( \vec{F} \) を受ける。 ニュートンの第3法則(作用・反作用の法則)から、この2つの力は大きさが等しくて向きが逆だ。つまり、\( \vec{F}{AB} = -\vec{F} \)。
衝突時間を \( \Delta t \) とすると、 Aが受けた力積は \( \vec{I}A = \vec{F}} \Delta t = \Delta \vec{pA \) Bが受けた力積は \( \vec{I}_B = \vec{F}_B \)} \Delta t = \Delta \vec{p
ここで、
\( \vec{F}{AB} \Delta t = -\vec{F}_A \) となる。
移項すると、\( \Delta \vec{p}_A + \Delta \vec{p}_B = \vec{0} \) だ!
これは、「Aの運動量の変化」と「Bの運動量の変化」を足すとゼロになる、つまり、} \Delta t だから、
これを一般的に言うと…
「複数の物体からなる系(システム)に、外部から力が働かない(または働く外力の合力がゼロである)場合、その系全体の運動量の合計は、相互作用の前後で常に一定に保たれる。」
\( \Large{\sum \vec{p}{\text{始め}} = \sum \vec{p} \)}}
これが運動量保存則だ! 衝突や分裂の現象では、内力(物体同士が及ぼし合う力)は非常に大きいけど、作用時間が短かったり、外力がそれらに比べて無視できたりする場合が多い。そんなときに、この運動量保存則が絶大な威力を発揮するんだ!
衝突の種類について(ちょこっとだけ) 衝突には、運動エネルギーも保存される「弾性衝突(完全弾性衝突ともいう)」と、運動エネルギーが保存されない(熱や音になったり、変形したりする)「非弾性衝突」がある。その中でも、衝突後に物体が一体となってくっついちゃうのを「完全非弾性衝突」っていうんだ。 重要なのは、どんな衝突であっても、運動量保存則は(外力が無視できれば)常に成り立つってことだ!
例題で体感! くっついちゃった!
問題: 「摩擦のない水平な直線上を、質量 \( m_A = 2.0 \mathrm{kg} \) の台車Aが右向きに速さ \( v_A = 3.0 \mathrm{m/s} \) で進んできて、前方に静止していた質量 \( m_B = 1.0 \mathrm{kg} \) の台車Bに衝突し、一体となって運動した。一体となった後の台車の速さ \( V \) を求めよ。」
- カリスマ講師の解法ナビ!
- これは「完全非弾性衝突」の例だな。そして、水平方向には外力が働いていない(重力と垂直抗力は鉛直方向でつり合っている)から、運動量保存則が使える!
- 衝突前の運動量の合計 \( P_{\text{始め}} \) (右向きを正とする) \( P_{\text{始め}} = m_A v_A + m_B v_B = (2.0 \mathrm{kg})(3.0 \mathrm{m/s}) + (1.0 \mathrm{kg})(0 \mathrm{m/s}) = 6.0 \mathrm{kg \cdot m/s} \)
- 衝突後の運動量の合計 \( P_{\text{終わり}} \) 衝突後はAとBが一体となるので、質量は \( (m_A + m_B) \)、速さを \( V \) とする。 \( P_{\text{終わり}} = (m_A + m_B)V = (2.0 \mathrm{kg} + 1.0 \mathrm{kg})V = 3.0V \)
- 運動量保存則 \( P_{\text{始め}} = P_{\text{終わり}} \) より: \( 6.0 = 3.0V \) \( \therefore \boxed{V = 2.0 \mathrm{m/s}} \) 一体となった台車は、右向きに \( 2.0 \mathrm{m/s} \) の速さで運動するってことだ!
ふぅー!今日の講義も濃密だったな!「運動量」と「力積」、そして超強力な「運動量保存則」。これらの新しい武器を手に入れた君は、また一つ物理の新たな地平を切り開いたことになる! 衝突現象の解析は、この運動量保存則がなければ手も足も出ないことが多いんだ。
最後に、今日の学びを脳に刻み込むための、熱血チャレンジ問題だ! 1. 同じ質量の鉄球と綿あめが、同じ速さで君に向かって飛んできたとする。どっちを止める方が「運動量の変化」が大きいかな?(ヒント:止める=運動量がゼロになる) 2. 野球のバッティングで、ピッチャーが投げた速いボールを打ち返すのと、トスバッティングで軽く上げられたボールを打つのとでは、バットがボールに与えるべき「力積」はどっちが大きいと思う?(ボールの質量は同じで、打ち返した後のボールの速さも同じくらいだとして考えてみてくれ!) 3. 二人がスケートボードに乗っていて、お互いをポンと押し合ったとしよう(最初は二人とも静止していたとする)。押した後の二人の運動量の合計はどうなると思う?(ヒント:運動量保存則!)
次回は、この運動量保存則をさらに深く掘り下げて、いろんなパターンの衝突問題(弾性衝突、非弾性衝突、斜め衝突など)に挑戦していくぞ!そして、衝突におけるエネルギーの行方についても考えていく。ますます目が離せない展開になること間違いなしだ! それじゃ、また次回!今日の衝撃、忘れるなよ!健闘を祈る!💪