【前回の宿題解説】連結の妙技、見抜けたか!?
最終更新日: 2025-06-05 11:33:06
作成者: カリスマ講師
前回は、連結された物体が一心同体となって動く「連結体の運動」の初歩を学び、最後に「もし力を加える物体を変えたら、加速度や張力はどうなる?」っていう、思考力を刺激する問いを投げかけたよな。まずはその答え合わせから、今日の講義のエンジンを温めていこう!
【前回の宿題解説】連結の妙技、見抜けたか!?
問題:「質量 \( m_1 \) の物体Aと質量 \( m_2 \) の物体Bが軽い糸で繋がれ、摩擦のない水平な床の上に置かれている。物体Bを水平右向きに一定の力 \( F \) で引っ張った場合の加速度は \( a = \frac{F}{m_1 + m_2} \)、張力は \( T = \frac{m_1 F}{m_1 + m_2} \) であった。もし引く力 \( F \) を物体Aの方に加えたら(Aを左から右に同じ力 \( F \) で引く)、糸の張力 \( T' \) の大きさは、Bを引いた場合と同じになると思う?それとも変わるかな? 加速度 \( a' \) はどうだろう?」
- カリスマ講師の答え:
- 加速度 \( a' \) について: これは、物体Bを引いた場合と同じになる! なぜなら、AとBをひとまとめにした「全体の質量 \( (m_1 + m_2) \)」に対して、同じ大きさの外力 \( F \) が働くことに変わりはないからだ。だから、全体の加速度はやっぱり \( \bm{a' = \frac{F}{m_1 + m_2}} \) だ。
- 張力 \( T' \) について: こっちは、物体Bを引いた場合とは異なる値になるんだ(ただし、\( m_1 = m_2 \) の場合を除く)! 今度は、物体Aを力 \( F \) で右向きに引いている。物体Aと物体Bの間の糸の張力を \( T' \) としよう。 それぞれの運動方程式を立ててみるぞ(右向きを正とする)。
- 物体A: \( m_1 a' = F - T' \) (Aは右に力 \( F \) で引かれ、左に張力 \( T' \) で引かれる)
- 物体B: \( m_2 a' = T' \) (Bは右に張力 \( T' \) だけで引かれる) 加速度 \( a' = \frac{F}{m_1 + m_2} \) を物体Bの式に代入するのが簡単だな。 \( \bm{T' = m_2 a' = m_2 \frac{F}{m_1 + m_2} = \frac{m_2 F}{m_1 + m_2}} \) 前回、物体Bを力 \( F \) で引いたときの張力は \( T = \frac{m_1 F}{m_1 + m_2} \) だった。 比べてみると、\( T' \) は \( m_2 \) に比例し、\( T \) は \( m_1 \) に比例している。つまり、引っ張る順番を変えると、糸の張力は変わるんだ! 直感的に言うと、糸の張力は「後ろにつながっている物体を引っ張るための力」だ。Aを引っ張るときは、糸はB(質量 \( m_2 \))を引っ張る。Bを引っ張るときは、糸はA(質量 \( m_1 \))を引っ張る。引っ張るべき相手の質量が違うから、張力も変わってくるってわけだ。面白いだろ?
さあ、連結体の運動のウォーミングアップは済んだな! 今日は、連結体の問題で非常によく登場するもう一つのスター選手、「滑車(かっしゃ)」の問題と、そしてガラッと視点を変えて、加速する乗り物の中などで感じる不思議な力、「慣性力(かんせいりょく)」について学んでいくぞ!準備はいいか?
【第13講改め】滑車のドラマと見かけの力! ~連結物体(続)&慣性力入門~ (前回第13講の続きなので、タイトルをちょっと調整したぜ!)
1.連結体の運動 例題2:天秤にかける運命!滑車問題
天井に固定された、軽くてなめらかに回る滑車がある。この滑車に軽い糸をかけ、その両端に質量がそれぞれ \( m_1 \) と \( m_2 \) のおもりAとおもりBを吊るしたとしよう。 さあ、このおもりたちはどう動くだろうか?(ここでは、\( m_1 > m_2 \) と仮定して、Aの方がBより重いとして考えてみよう!)
- カリスマ講師の解法ナビ!
- 力の図示と運動の向きの仮定:
- おもりA (\( m_1 \)):
- 下向きに重力 \( m_1 g \)
- 上向きに糸の張力 \( T \)
- \( m_1 > m_2 \) なので、Aは下に、Bは上に動くと予想できる。だから、Aの加速度の向きを下向きに \( a \) と仮定しよう。
- おもりB (\( m_2 \)):
- 下向きに重力 \( m_2 g \)
- 上向きに糸の張力 \( T \)
- Aが下に \( a \) で加速するなら、糸で繋がっているBは上に同じ大きさの加速度 \( a \) で加速するはずだ。 (ポイント:軽い糸で繋がれた滑車の両端のおもりは、加速度の大きさが等しく、糸の張力の大きさも等しい!)
- おもりA (\( m_1 \)):
- それぞれの運動方程式を立てる:
- おもりA (下向きを正とする): \( m_1 a = m_1 g - T \) …
- 力の図示と運動の向きの仮定:
①
* おもりB (上向きを正とする。Aの加速度の向きと合わせるため、Bの運動の正の向きを上にするのがコツ!): m_2 a = T - m_2 g …
②
3. **連立方程式を解く**: ①式と②式を足し算すると、右辺の T と -T がうまい具合に消えるんだ! (m_1 a) + (m_2 a) = (m_1 g - T) + (T - m_2 g) (m_1 + m_2)a = m_1 g - m_2 g (m_1 + m_2)a = (m_1 - m_2)g よって、加速度 a は、 \boxed{a = \frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}g} 次に、この求まった a を①式(または②式)に代入して張力 T を求めよう。②式に代入してみるか。 T = m_2 a + m_2 g = m_2 (a+g) T = m_2 \left( \frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2}g + g \right) = m_2 g \left( \frac{m_1 - m_2}{m_1 + m_2} + 1 \right) T = m_2 g \left( \frac{m_1 - m_2 + m_1 + m_2}{m_1 + m_2} \right) = m_2 g \frac{2m_1}{m_1 + m_2} よって、張力 T は、 \boxed{T = \frac{2m_1 m_2}{m_1 + m_2}g} 4. **結果を吟味!**: * もし m_1 > m_2 なら、a > 0 となり、仮定通りAは下降し、Bは上昇する。 * もし m_1 = m_2 なら、a = 0 となり、おもりはつり合って動かない(か、初め動いていたら等速で動く)。このとき T = m_1 g (= m_2 g) となるのも納得だ。 * もし m_1 < m_2 なら、a < 0 となる。これは、最初に仮定した加速度の向き(Aが下)とは逆向きに、つまりAが上昇し、Bが下降することを意味している。ちゃんと物理法則は正しい答えを導き出してくれるんだ!
2.視点を変えると力が見える? 「慣性力」という名の見かけの力!
さあ、ここからは少し頭を切り替えるぞ! これまでは、基本的に地面にドッシリと静止している観測者から見た物体の運動を考えてきた。こういう、静止しているか等速直線運動している座標系のことを「慣性系」っていうんだったな。ニュートンの運動法則は、この慣性系でバッチリ成り立つ。
でも、もし君が加速している乗り物(例えば、発進する電車やエレベーター)の中にいたら、物体の運動はどう見えるだろう? こういう加速している座標系のことを「非慣性系」というんだ。 非慣性系の中でニュートンの法則をそのまま使おうとすると、なんだかおかしなことが起こる。「あれ?この物体、力が働いてないはずなのに勝手に動いたぞ?」みたいにね。
そこで登場するのが「慣性力(かんせいりょく)」という、ちょっと特別な「見かけの力」なんだ。
慣性力とは? ズバリ言うと、加速度 \( \vec{a_0} \) で運動している観測者(非慣性系)から、質量 \( m \) の物体を見ると、その物体には、実際に働いている力のほかに、観測者の加速度 \( \vec{a_0} \) とは逆向きに、大きさ \( m|\vec{a_0}| \) の慣性力が働いているように見えるんだ。 数式で書くと、慣性力 \( \vec{F_i} = -m\vec{a_0} \) となる。
- ポイント:
- 慣性力は、観測者が加速しているときにだけ現れる「見かけの力」。
- 向きは、観測者の加速度と「逆」。
- 大きさは、物体の質量 \( m \) と観測者の加速度の大きさ \( |\vec{a_0}| \) の積 \( m|\vec{a_0}| \)。
慣性力を導入するメリットは? 非慣性系で物体の運動を考えるとき、この「慣性力」をあたかも実際に働く力の一つとして計算に加えることで、見かけ上、力のつり合いの式や運動方程式( \( m\vec{a}' = \sum \vec{F}_{\text{実}} + \vec{F_i} \)、ここで \( \vec{a}' \) は非慣性系から見た物体の加速度)が成り立つようにできるんだ。つまり、非慣性系の中でも、慣性系と同じような感覚で問題を解くことができるようになる。
注意点! 慣性力はあくまで「見かけの力」だから、実際にその力を及ぼしている相手はいない。だから、作用・反作用の法則も慣性力には適用されないんだ。
例:加速する電車の中の吊り革 電車が右向きに加速度 \( a_0 \) で発車したとしよう。
- 地上の観測者(慣性系)から見ると: 吊り革は、電車と一緒に右向きに \( a_0 \) で加速している。そのためには、吊り革を支えている部分から、右向きの力が働いている必要がある(だから吊り革は少し傾く)。
- 電車内の観測者(非慣性系)から見ると: 自分は電車と一緒に動いているから、吊り革は(ある角度で傾いて)静止しているように見える。このとき、吊り革には重力と糸の張力のほかに、電車の加速度 \( a_0 \) とは逆向き、つまり左向きに \( ma_0 \) (\( m \)は吊り革の質量)の慣性力が働いていると考える。そして、これらの力(重力、張力、慣性力)がつり合っているから、吊り革は傾いた状態で静止している、と解釈するんだ。
3.例題で体感! エレベーターの中の体重計
問題: 「質量 \( m \) の人が、鉛直上向きに加速度 \( a_0 \) で上昇しているエレベーターの中の体重計に乗っている。このとき、体重計の示す値(つまり、人が床から受ける垂直抗力の大きさ \( N \))はいくらか。重力加速度の大きさを \( g \) とする。」
カリスマ講師の解法ナビ!
解法1:地上の観測者(慣性系)から見る! 1. 注目物体:人。 2. 人に働く実際の力: * 重力 \( mg \)(鉛直下向き) * 床からの垂直抗力 \( N \)(鉛直上向き、これが体重計の示す値) 3. 人の加速度:エレベーターと一緒に鉛直上向きに \( a_0 \)。 4. 運動方程式(鉛直上向きを正とする): \( ma_0 = N - mg \) よって、\( \boxed{N = mg + ma_0 = m(g + a_0)} \)
解法2:エレベーター内の観測者(非慣性系)から見る! 1. 注目物体:人。 2. エレベーター(観測者)の加速度:鉛直上向きに \( a_0 \)。 3. 人に働く慣性力:観測者の加速度と逆向き、つまり鉛直下向きに \( ma_0 \)。 4. 人に働く力(実際の力+慣性力):
* 重力 mg(鉛直下向き) * 床からの垂直抗力 N(鉛直上向き) * 慣性力 ma_0(鉛直下向き)
- エレベーター内の観測者から見ると、人は静止している(加速していない)。だから、力のつり合いを考える! (鉛直上向きを正とする) \( N - mg - ma_0 = 0 \) よって、\( \boxed{N = mg + ma_0 = m(g + a_0)} \)
どうだい? どちらの考え方でも、同じ答えになっただろ! この結果から、エレベーターが上に加速すると、体重計の目盛りは普段( \( mg \))より大きくなる、つまり「重くなった」ように感じるわけだ。逆に、下に加速すると体重計の目盛りは小さくなる(\( N = m(g - a_0) \) となる)。もしエレベーターのワイヤーが切れて自由落下(\( a_0 = g \) で下向き)したら、\( N = m(g-g) = 0 \)! まるで無重力状態だ!(実際には無重力とは違うけど、床からの力がなくなるんだ)
ふぅーっ!今日の講義も熱かったな!連結体の滑車問題、そして慣性力という新しい概念。頭がフル回転したんじゃないか?でも、この山を越えれば、また一つ物理の頂に近づけるぜ!
最後に、今日の理解度をガッチリ固めるための挑戦状だ! 1. 滑車の例題で、もし \( m_1 = m_2 \) だったら、加速度 \( a \) と張力 \( T \) はどうなるんだったっけ? もう一度、式から確認してみてくれ! 2. 「慣性力」って、本当に物体に働いている「実際の力」なのかな? それとも、あくまで「見かけの力」? 作用・反作用の法則は、慣性力にも当てはまるんだったっけ? 3. 君が乗っている電車が、一定の速さでまっすぐ走っている(等速直線運動している)とする。このとき、電車内の君は慣性力を感じるかな?
次回は、いよいよ「仕事」と「エネルギー」っていう、物理学のもう一つの超重要な柱となる概念に突入するぞ!運動を、力と加速度だけじゃなくて、まったく新しい視点から見ることができるようになる。世界がガラッと変わるような面白さだから、楽しみにしててくれよな! それじゃ、また次回!今日の復習、しっかりやっておくんだぞ!健闘を祈る!💪