【熱力学 第3講】ミクロの熱闘! ~気体分子運動論と熱力学第一法則~
最終更新日: 2025-07-08 04:51:20
作成者: カリスマ講師
うおおっしゃあああ!その「続きを!」という、知的好奇心に満ちあふれた声、俺の魂を揺さぶるぜ!物理の熱いビートを、今日もガンガン刻んでいこう!👍
前回は、物質が固体・液体・気体と姿を変える「状態変化」と、その裏に隠された「潜熱」、そして気体の振る舞いを記述する「ボイル・シャルルの法則」から究極の「理想気体の状態方程式 \( PV=nRT \)」までを学んだんだったな。その最後に、君の熱力学IQを試す宿題を出したはずだ。まずはその答え合わせで、今日の講義へのボルテージを上げていくぞ!
【前回の宿題解説】状態変化と気体の法則、マスターできたか!?
質問1:「やかんでお湯を沸かしているとき、水がグラグラと沸騰している間は、いくら火力を強くしても水の温度は100℃のまま変わらない。このとき、コンロから供給され続けている熱エネルギーは、一体何に使われているんだったかな?」
- カリスマ講師の答え: その熱エネルギーは、水の温度を上げるためではなく、水(液体)を水蒸気(気体)へと状態変化させるために使われているんだ!これを「蒸発熱(じょうはつねつ)」(潜熱の一種)というんだったな。分子同士のしがらみを断ち切って、自由に飛び回れるようにするためのエネルギーだ!
質問2:「密閉された容器に入ったお菓子の袋を、標高の高い山(気圧が低い場所)に持っていくと、袋がパンパンに膨らむことがある。これは、ボイルの法則で説明できるかな? それともシャルルの法則?(温度はあまり変わらないとして考えてみよう)」
- カリスマ講師の答え: これは主に「ボイルの法則」で説明できるぞ!
- 理由: ボイルの法則は「温度が一定なら、気体の体積は圧力に反比例する (\( PV=\text{一定} \))」だったな。山の上は気圧が低い。袋の中の気体の量は変わらないから、外の圧力が下がると、袋の中の気体は体積を増やして内側から袋を押す力が相対的に強くなり、パンパンに膨らむってわけだ。
質問3:「理想気体の状態方程式 \( PV=nRT \) の中で、\( P, V, n, T \) のうち、実験中に変化させることができる「変数」は何と何と何があるかな? \( R \) はどうだろう?」
- カリスマ講師の答え: 変化させることができる「変数(状態量)」は、圧力 \( P \)、体積 \( V \)、物質量 \( n \)、そして絶対温度 \( T \) の4つだ! これらを色々いじることで、気体の状態が変わる。 一方、\( R \) は「気体定数」といって、宇宙のどこでも変わらない定数だ!こいつは変化しないぜ。
さあ、ウォーミングアップはバッチリだな! これまで見てきた理想気体の状態方程式 \( PV=nRT \) は、気体の圧力、体積、温度といった、我々が直接測定できる「マクロな量」の関係を示していた。 でも、「なぜ気体は圧力を持つんだろう?」「温度を上げると、気体の中で一体何が起こっているんだろう?」っていう、もっと根本的な疑問が湧いてこないか?
今日はいよいよ、その気体を構成している無数の「原子」や「分子」といったミクロな視点から、気体の性質を解き明かす「気体分子運動論(きたいぶんしうんどうろん)」の入口に立つぞ!そして、熱力学で最も重要な法則の一つ、「熱力学第一法則(ねつりきがくだいいちほうそく)」へと駒を進める!エネルギーの出入りに関する宇宙の根本原理だ!
【熱力学 第3講】ミクロの熱闘! ~気体分子運動論と熱力学第一法則~
1.気体分子運動論への招待 ~ミクロの粒子の乱舞~
「気体分子運動論」ってのは、難しそうに聞こえるかもしれないけど、基本の考え方はこうだ。 「気体ってのは、めちゃくちゃたくさんの小さな粒子(原子や分子)が、容器の中を猛スピードで、デタラメな方向に飛び回っている状態なんだ!」
このミクロな粒子たちの振る舞いが、我々が観測するマクロな気体の性質(圧力や温度)を生み出している、って考えるんだ。
理想気体のミクロな仮定(おさらいも兼ねて) 気体分子運動論で「理想気体」を考えるとき、いくつかのシンプルな仮定を置くんだったな。
- 分子は点だ!: 分子自身の大きさは、容器の大きさに比べて無視できるほど小さい。
- 分子間力は無視!: 分子同士が衝突するとき以外は、お互いに力を及ぼし合わない(引力も反発力もナシ)。
- 完全弾性衝突!: 分子同士の衝突や、分子と容器の壁との衝突は、エネルギーを失わない「完全弾性衝突」だ。
2.圧力の正体 ~壁ドンが生み出す力~
じゃあ、気体の「圧力」ってのは、ミクロな視点から見ると何なんだろう? それは、無数の気体分子が、容器の壁にバンバン衝突することによって生じる力なんだ!
一つ一つの分子が壁にぶつかるとき、壁にごくわずかな力を及ぼす。それが、とてつもない数の分子によって、あらゆる方向から、絶え間なく繰り返される。この結果、壁の単位面積あたりに働く平均的な力が「圧力」として現れるんだ。 分子の動きが激しいほど(つまり温度が高いほど)、あるいは分子の数が多いほど(つまり密度が高いほど)、壁への衝突は激しくなり、圧力は高くなる。なるほど!って感じだろ?
3.温度の正体 ~分子の運動エネルギーの平均値~
次に「温度」。これもミクロな視点で見ると、正体がハッキリする。 理想気体の絶対温度 \( T \) は、実は気体分子1個あたりの平均の並進運動エネルギーに直接比例するんだ!
\( \Large{\frac{1}{2}m\overline{v^2} = \frac{3}{2}k_B T} \)
ここで、
- \( m \):気体分子1個の質量
- \( \overline{v^2} \):気体分子の速さの2乗の平均値(「平均二乗速度」という)
- \( k_B \):ボルツマン定数。これは、気体定数 \( R \) をアボガドロ数 \( N_A \) で割ったもの (\( k_B = R/N_A \approx 1.38 \times 10^{-23} \mathrm{J/K} \))。分子1個レベルでのエネルギーと温度を結びつける重要な定数だ。
つまり、温度が高いということは、分子たちが平均してより速く動き回っているってことなんだ! そして、絶対零度 (0K) では、この式から分子の平均運動エネルギーもゼロになる。つまり、(古典的には)分子の運動が完全に止まると考えられるわけだ。
4.内部エネルギー \( U \) ~理想気体に秘められた全エネルギー~
さあ、ここで熱力学で超重要な「内部エネルギー \( U \)」の登場だ。 内部エネルギーとは、物体の内部に蓄えられている、構成粒子の全ての運動エネルギーと、粒子間の相互作用による位置エネルギーの総和のこと。
でも、我らが理想気体の場合、分子間力は働かないと仮定しているから、分子間の位置エネルギーは考えなくていい! そして、もしそれが単原子分子理想気体(ヘリウムHe、ネオンNe、アルゴンArみたいに、1個の原子がそのまま分子として振る舞う気体)なら、分子の回転や振動のエネルギーも(今のところ)考えなくてOK。 すると、単原子分子理想気体の内部エネルギー \( U \) は、単純に全分子の並進運動エネルギーの合計となるんだ!
分子1個の平均運動エネルギーは \( \frac{3}{2}k_B T \) だった。 もし、\( n \) モルの気体があれば、そこには \( N = nN_A \) 個の分子がある。 だから、内部エネルギー \( U \) は、 \( U = N \times (\frac{3}{2}k_B T) = nN_A \times (\frac{3}{2} \frac{R}{N_A} T) \) スッキリ整理すると…
\( \Large{U = \frac{3}{2}nRT} \)
出た!これが単原子分子理想気体の内部エネルギーの公式だ! この式が教えてくれる超重要なことは、「理想気体の内部エネルギーは、その絶対温度 \( T \) (と物質量 \( n \)) だけで決まる!」ということ。体積 \( V \) や圧力 \( P \) には直接依存しないんだ!(ただし、温度が変われば \( P \) や \( V \) も変わる可能性があるけどね)。
(ちなみに、酸素O \( _2 \)や窒素N\( _2 \)のような二原子分子理想気体だと、回転のエネルギーも入ってくるから \( U = \frac{5}{2}nRT \) になることが多い。でも、まずは単原子分子でしっかり理解しよう!)
5.熱力学第一法則 ~エネルギー保存の鉄則、熱力学バージョン!~
お待たせしたな!いよいよ、熱力学のど真ん中を貫く大法則、「熱力学第一法則」の登場だ! これは、みんなが力学で学んだ「エネルギー保存則」の、熱力学バージョンだと思えばいい。エネルギーは勝手に消えたり生まれたりしない、ただ姿を変えるだけだ!
その内容はこうだ! 「ある系(例えばシリンダーの中の気体)の内部エネルギーの変化量 \( \Delta U \) は、その系が外部から吸収した熱量 \( Q \) と、その系が外部にした仕事 \( W \) の差に等しい。」
数式で書くと…
\( \Huge{\Delta U = Q - W} \)
この式の各項の意味と符号のルールを、しっかり押さえるんだぞ!
-
\( \Delta U \):内部エネルギーの変化 (\( \Delta U = U_{後} - U_{前} \))
- \( \Delta U > 0 \) なら、内部エネルギーが増加した(温度が上がった、など)。
- \( \Delta U < 0 \) なら、内部エネルギーが減少した(温度が下がった、など)。
-
\( Q \):系が外部から吸収した熱量
- \( Q > 0 \) なら、系は熱を吸収した(温められた)。
- \( Q < 0 \) なら、系は熱を放出した(冷やされた)。
-
\( W \):系が外部にした仕事
- \( W > 0 \) なら、系は外部に仕事をした(例:気体が膨張してピストンを押した)。
- \( W < 0 \) なら、系は外部から仕事をされた(例:気体が外部から圧縮された)。
(教科書によっては、 \( W \) を「系が外部からされた仕事」として定義し、\( \Delta U = Q + W \) と書くものもあるけど、ここでは「系が外部にした仕事」を \( W \) としているので、\( \Delta U = Q - W \) でいくぞ!どっちの定義か常に意識することが大事だ。)
この法則は、「系に入ってきたエネルギー(熱 \( Q \))は、系の内部エネルギーを増やすか、あるいは系が外部に仕事 \( W \) をするのに使われる。その収支はピッタリ合うよ!」って言ってるんだ。
6.気体がする仕事 \( W \) ~膨張と圧縮のドラマ~
気体が外部に仕事をする典型的な例は、ピストン付きのシリンダーに入った気体が膨張してピストンを押し動かす場合だ。 もし、気体の圧力が一定 \( P \) のまま、体積が \( \Delta V \) だけ変化した(膨張した)とすると、気体が外部にした仕事 \( W \) は、
\( \Large{W = P\Delta V} \) (圧力が一定の場合)
と表される。 もし圧力が変化するなら、仕事 \( W \) は \( P-V \) グラフ(縦軸に圧力 \( P \)、横軸に体積 \( V \) をとったグラフ)の面積で求められるんだ。この話はまた詳しくやるぞ!
例題で熱力学第一法則を体感! 「ある理想気体が、外部から \( 100 \mathrm{J} \) の熱を吸収し、その過程で外部に対して \( 40 \mathrm{J} \) の仕事をした。この気体の内部エネルギーの変化 \( \Delta U \) はいくらか?」
- \( Q = +100 \mathrm{J} \) (熱を吸収したからプラス)
- \( W = +40 \mathrm{J} \) (外部に仕事をしたからプラス)
- 熱力学第一法則 \( \Delta U = Q - W \) より、 \( \Delta U = 100 \mathrm{J} - 40 \mathrm{J} = \boxed{60 \mathrm{J}} \) つまり、この気体の内部エネルギーは \( 60 \mathrm{J} \) 増加したってことだ!吸収した熱の一部が仕事に使われ、残りが内部エネルギーの増加になったんだな。
ふぅー!今日の講義もアツかったな! 気体分子のミクロな視点から圧力や温度の正体を探り、そしてエネルギー保存の普遍的な法則である熱力学第一法則までたどり着いた。目に見えない世界のダイナミズムを感じてくれたらうれしいぜ!
最後に、今日の学びが君の知識の血となり肉となるための、灼熱の確認問題だ! 1. 理想気体の温度を上げると、気体分子1個あたりの平均運動エネルギーはどうなるんだったかな? 2. 単原子分子理想気体の内部エネルギーは、何だけで決まるんだったっけ?(圧力?体積?温度?物質量?) 3. ある気体が断熱的に膨張したとする。「断熱的」ってことは、外部との熱のやり取りがない ( \( Q=0 \)) ってことだ。このとき、もし気体が外部に仕事 \( W \) をしたら(\( W>0 \))、その気体の内部エネルギー \( \Delta U \) はどうなる?(増える?減る?変わらない?)熱力学第一法則から考えてみよう!
次回は、この熱力学第一法則を、気体の様々な状態変化(定圧変化、定積変化、等温変化、断熱変化)に当てはめて、それぞれで何が起こるのかを詳しく見ていくぞ!\( P-V \)グラフも大活躍するからな!熱力学の面白さがさらに加速するぜ! それじゃ、また次回!今日の法則、じっくり反芻して、自分のものにしてくれよな!健闘を祈る!🔥