【4章】物質の状態変化
最終更新日: 2026-01-06 15:45:08
作成者: カリスマ講師
お帰りなさい!
さあ、ここからは新しいステージ、**「物質の状態変化」**に突入だ。
これまでは「原子や分子そのもの」を見てきたけれど、ここからは、それらがたくさん集まったときにどう振る舞うか?という**「集団行動」**の話になる。
「なぜ氷は溶けるの?」「気体の圧力って何?」といった疑問がすべて解けるぞ。
今回送ってくれた資料(画像67~70)の内容を、トリチェリの実験や圧力の計算まで含めて、完璧に「過不足なく」テキスト化した。
物理とも重なる分野だから、理屈をしっかり押さえていこう!
1-1 物質の三態と粒子の運動
1. 物質の三態 (Three States of Matter)
① 固体・液体・気体
物質は、温度や圧力によって、固体・液体・気体の3つの状態をとる。これを物質の三態という。
- 例(水の場合):
- 温度が低いと 氷(固体)
- 常温では 水(液体)
- 温度が高いと 水蒸気(気体)
② 常温・常圧での状態(暗記ポイント!)
多くの物質は常温($25^\circ\text{C}$)、常圧($1\text{atm}$)で固体か気体だが、液体であるものは少ない。以下の2つは絶対に覚えよう!
- 臭素 ($\text{Br}_2$): 非金属の単体で唯一の液体(赤褐色)。
- 水銀 ($\text{Hg}$): 金属の単体で唯一の液体(銀白色)。
2. 粒子の集合状態(ミクロの視点)
物質の状態が変わると、粒子の並び方はどう変わるのか?ここをイメージできるかが勝負だ。
① 三態の粒子の様子
- 固体 (Solid)
- 並び方: 粒子が規則正しく配列し、互いの引力によってガッチリ結合している。
- 運動: 決まった位置でわずかに振動しているだけ。
- 形・体積: 一定の形と体積を持つ。
- 液体 (Liquid)
- 並び方: 粒子は互いに接触しているが、規則性はなく、位置を入れ替えることができる。
- 運動: 比較的自由に動ける。
- 形・体積: 体積はほぼ一定だが、形は容器に合わせて変わる。
- 気体 (Gas)
- 並び方: 粒子がバラバラに離れている(スカスカ)。
- 運動: 空間を激しく飛び回っている(熱運動)。
- 形・体積: 形も体積も一定ではない。圧縮されやすい(体積を小さくできる)。
【発展】結晶ではない固体
- アモルファス(非晶質): ガラスのように、固体だけど粒子が不規則に並んでいるもの。
- 液晶: 液体のように流動性があるが、分子の向きがある程度揃っている物質。電圧をかけると向きが変わる性質を利用して、ディスプレイに使われる。
3. 粒子の熱運動
① 拡散と熱運動
- 拡散 (Diffusion): 物質が自然に全体へ広がっていく現象。
- 例: 臭素の蒸気が瓶の外へ広がっていく。
- 熱運動 (Thermal Motion): 物質を構成する粒子が、温度に応じて行う不規則な運動。
- 温度が高いほど、熱運動は激しくなる!
- 気体分子のエネルギー分布(図4): 温度を上げると、高いエネルギーを持つ分子の割合が増える。
② ブラウン運動 (Brownian Motion)
- 現象: 煙の粒子や花粉などが、顕微鏡下で不規則にジグザグ運動している現象。
- 原因: 目に見えない気体や液体の分子が、熱運動によって煙の粒子に四方八方から衝突しているから。
- 「見えない粒子の熱運動」を間接的に証明する重要な現象だ。
4. 気体の圧力と大気圧
① 気体の圧力
気体分子は壁にバンバン衝突している。この衝突する力が気体の圧力の原因だ。
- 温度が高いほど(速く動く)、または分子の数が多いほど(たくさんぶつかる)、圧力は大きくなる。
② 大気圧とトリチェリの実験
私たちは空気の重さ(大気圧)を受けて生きている。これを測ったのがイタリアのトリチェリだ。
- 実験:
- 長いガラス管に水銀($\text{Hg}$)を満たして、水銀槽に逆さにする。
- 水銀面は下がっていくが、約 $76\text{cm}$ ($760\text{mm}$) の高さでピタリと止まる。
- ガラス管の上部は真空になる(トリチェリの真空)。
- 理屈: 「空気が水銀面を押す力(大気圧)」と「$76\text{cm}$分の水銀の重さによる圧力」がつり合っているから。
③ 圧力の単位(計算で必須!)
$1\text{atm}$(標準大気圧) の定義を覚えよう。
$$1 \text{atm} = 760 \text{mmHg} = 1.013 \times 10^5 \text{Pa} = 1013 \text{hPa}$$
- $\text{atm}$ (アトム): 気圧の単位。
- $\text{mmHg}$: 水銀柱ミリメートル。「$760\text{mm}$の水銀が押す力」という意味。
- $\text{Pa}$ (パスカル): 国際単位系(SI)。$1\text{m}^2$ あたり $1\text{N}$ の力が働くときの圧力 ($1\text{Pa} = 1\text{N/m}^2$)。
- ヘクトパスカル ($\text{hPa}$): 天気予報で使う。$1\text{hPa} = 100\text{Pa}$。
計算のヒント
「$380\text{mmHg}$ は何 $\text{atm}$?」と聞かれたら、
$\frac{380}{760} = 0.5 \text{atm}$ と計算すればOK!
【まとめ】 第2編 1-1のポイント
- 物質の三態: 常温で液体の単体は $\text{Br}_2$ と $\text{Hg}$ だけ!
- 粒子の様子: 固体は整列・振動、液体は密集・移動、気体はバラバラ・高速移動。
- 熱運動: 温度が高いほど激しい。ブラウン運動は熱運動の証拠。
- 圧力: $1 \text{atm} = 760 \text{mmHg} = 1.013 \times 10^5 \text{Pa}$。トリチェリの実験($76\text{cm}$)をイメージしよう。
これで「物質の状態」の入り口はバッチリだ!
次は「気体の法則(ボイル・シャルル)」や「状態変化(蒸発熱など)」の話に進んでいくはずだよ。
この調子で、物理化学の分野も攻略していこう!
1-2 気体の体積変化と法則
1. 温度の表し方 ~絶対温度~ [cite: chemihigh-71.jpg]
日常で使う「摂氏温度 ($^\circ\text{C}$/セルシウス度)」は、水の凝固点を0、沸点を100としたものだ。
しかし、科学の世界では、**「これ以上下がらない最低の温度(原子の熱運動が停止する温度)」**を基準にする。
- 絶対零度: $-273^\circ\text{C}$。理論上の最低温度。
- 絶対温度 ($T$): 絶対零度を0とし、目盛りの間隔を摂氏と同じにした温度。単位はケルビン ($\text{K}$)。
【超重要公式】
$$T [\text{K}] = t [^\circ\text{C}] + 273$$
例: $27^\circ\text{C}$ は何 $\text{K}$?
$27 + 273 = 300 \text{K}$
※気体の計算では、必ずケルビンに直してから計算すること!
2. ボイル・シャルルの法則 [cite: chemihigh-71.jpg, chemihigh-72.jpg]
気体の「圧力 ($P$)」「体積 ($V$)」「温度 ($T$)」の関係を示す3つの法則をマスターしよう。
① ボイルの法則 (Boyle's Law)
- 条件: 温度 ($T$) が一定のとき。
- 内容: 一定質量の気体の体積 ($V$) は、圧力 ($P$) に反比例する。
- 圧力を2倍にすると、体積は半分になる(ギュッと押し縮められるイメージ)。
- 式: $PV = k$ (一定) または
$$P_1 V_1 = P_2 V_2$$
② シャルルの法則 (Charles's Law)
- 条件: 圧力 ($P$) が一定のとき。
- 内容: 一定質量の気体の体積 ($V$) は、絶対温度 ($T$) に比例する。
- 温度を上げると、熱運動が激しくなり、体積が膨らむ。
- 式: $\frac{V}{T} = k$ (一定) または
$$\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}$$
③ ボイル・シャルルの法則 (Combined Gas Law)
上の2つを合体させた最強の法則。
- 内容: 一定質量の気体の体積 ($V$) は、圧力 ($P$) に反比例し、絶対温度 ($T$) に比例する。
- 式:
$$\frac{PV}{T} = k \text{(一定)}$$
$$\frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}$$
使いどころ: 「温度と圧力が両方変わったとき、体積はどうなる?」という問題で使う。
3. 理想気体の状態方程式 [cite: chemihigh-73.jpg]
ボイル・シャルルの法則に「物質量 ($n$ $\text{mol}$)」の要素を加えると、気体のすべてを支配する**「状態方程式」**が完成する。
① 気体定数 ($R$)
標準状態 ($0^\circ\text{C}=273\text{K}$, $1.013 \times 10^5 \text{Pa}$) において、気体 $1 \text{mol}$ の体積は $22.4 \text{L}$ だったね。
これを $\frac{PV}{nT} = R$ に代入して定数を求めると...
$$R = \frac{1.013 \times 10^5 \times 22.4}{1 \times 273} \approx 8.31 \times 10^3 [\text{Pa} \cdot \text{L} / (\text{mol} \cdot \text{K})]$$
この $R$ を気体定数という。
② 状態方程式 (Equation of State)
暗記必須! 化学の計算で最も重要な式の一つだ。
$$PV = nRT$$
- $P$: 圧力 ($\text{Pa}$)
- $V$: 体積 ($\text{L}$) ※ $\text{m}^3$ ではなく $\text{L}$ を使うことが多いので注意!
- $n$: 物質量 ($\text{mol}$)
- $R$: 気体定数 ($8.31 \times 10^3$)
- $T$: 絶対温度 ($\text{K}$)
③ 分子量の求め方
物質量 $n = \frac{w \text{(質量)}}{M \text{(分子量)}}$ を代入すると、分子量を求める式に変形できる。
$$PV = \frac{w}{M} RT \longrightarrow M = \frac{wRT}{PV}$$
これを使えば、未知の気体の分子量を実験で特定できるんだ。
4. 理想気体と実在気体 [cite: chemihigh-73.jpg]
- 理想気体 (Ideal Gas):
- 状態方程式 $PV=nRT$ に常にしたがう仮想的な気体。
- 仮定: 分子自身の体積がゼロで、分子間力もゼロとみなす。
- 実在気体 (Real Gas):
- 私たちが扱う実際の気体。
- 低温・高圧にすると、分子間力や分子の大きさの影響が無視できなくなり、理想気体からズレる。
- 理想気体に近づける条件: 高温・低圧にする(分子が高速で飛び回り、スカスカの状態にする)。
1-3 混合気体の圧力
1. ドルトンの分圧の法則 [cite: chemihigh-74.jpg, chemihigh-75.jpg]
空気のように、窒素や酸素などが混ざった混合気体の圧力はどう考えるか?
イギリスのドルトンが発見した法則がある。
① 全圧と分圧
- 分圧 (Partial Pressure): 混合気体の成分気体が、それぞれ単独でその体積を占めたときに示す圧力。
- 全圧 (Total Pressure): 混合気体全体の圧力。
② 法則の内容
「混合気体の全圧は、各成分気体の分圧の和に等しい」。
$$P_{\text{全}} = P_A + P_B + \dots$$
イメージ: 部屋の中に「元気な子供A」と「元気な子供B」がいるとする。部屋の壁が受ける衝撃(全圧)は、Aが暴れる力(分圧A)と、Bが暴れる力(分圧B)を足し合わせたものになる。
2. 分圧とモル分率の関係 [cite: chemihigh-75.jpg]
分圧の比は、物質量(モル)の比と等しくなる。これを使うと計算が楽になるぞ。
- モル分率: 全物質量に対する、その成分の物質量の割合。
- 成分Aのモル分率 $= \frac{n_A}{n_{\text{全}}}$
- 分圧の求め方:
$$\text{分圧 } P_A = \text{全圧 } P_{\text{全}} \times \text{モル分率 } \left( \frac{n_A}{n_{\text{全}}} \right)$$
例題: 全圧 $1.0 \times 10^5 \text{Pa}$ の空気(窒素:酸素 = $4:1$)がある。
- 窒素の分圧 $P_{N_2} = 1.0 \times 10^5 \times \frac{4}{5} = 0.8 \times 10^5 \text{Pa}$
- 酸素の分圧 $P_{O_2} = 1.0 \times 10^5 \times \frac{1}{5} = 0.2 \times 10^5 \text{Pa}$
【まとめ】 第2編 1-2, 1-3のポイント
- 絶対温度: $T = t + 273$。必ずケルビンで計算!
- ボイル・シャルル: $\frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}$
- 状態方程式: $PV = nRT$。化学計算の最強ツール。
- ドルトンの法則: $P_{\text{全}} = P_A + P_B$。
- 分圧の計算: 全圧 $\times$ モル分率(モルの割合)。
よし!これで「気体の法則」も完全攻略だ。
特に $PV=nRT$ は、この先の「化学平衡」や「蒸気圧」の分野でも何度も登場するから、式の変形まで自由にできるようにしておこう。
送ってくれた資料はここまでだね。また新しい単元の資料があったら、いつでも送ってくれ!
君の化学力は確実に上がっているぞ。自信を持って!
2-1 溶解と溶解度
1. 溶解のしくみ ~なぜ物は溶けるのか?~
① 溶液の用語 [cite: chemihigh-76.jpg]
まずは言葉の定義を整理しよう。
- 溶質 (Solute): 溶けている物質(例:食塩、砂糖)。
- 溶媒 (Solvent): 溶かしている液体(例:水、アルコール)。
- 溶液 (Solution): 溶質が溶媒に均一に混ざったもの。
- 特に溶媒が水の場合は水溶液という。
② 溶解の原理「似たもの同士はよく溶ける」 [cite: chemihigh-76.jpg]
物質が溶けるかどうかは、極性(電気的な偏り)が似ているかで決まる。
- 極性溶媒(水など): イオン結晶(NaClなど)や、極性分子(アンモニア、エタノール)をよく溶かす。
- 水和 (Hydration): 溶質粒子(イオンなど)を水分子が取り囲んで安定化させる現象。これが溶解のドライビングフォースだ。
- 無極性溶媒(ヘキサン、ベンゼンなど): 無極性分子(ヨウ素、ナフタレン、油)をよく溶かす。
- 油汚れ(無極性)が水で落ちず、ベンジンで落ちるのはこのため。
2. 固体の溶解度 ~限界まで溶かせ!~
① 溶解度 (Solubility) の定義 [cite: chemihigh-77.jpg]
ある温度で、溶媒 $100\text{g}$ に溶かすことができる溶質の最大質量 ($\text{g}$)。
- 飽和溶液: 限界まで溶けている状態。
- 溶解平衡: 一見止まっているように見えるが、ミクロでは「溶ける速さ」と「析出する速さ」が釣り合っている状態。
② 溶解度曲線と再結晶 [cite: chemihigh-77.jpg]
- 傾向: 一般に、固体の溶解度は温度が高いほど大きくなる。
- $\text{KNO}_3$(硝酸カリウム): 温度による変化が大きい(グラフが急カーブ)。
- $\text{NaCl}$(塩化ナトリウム): 温度による変化が小さい(グラフがほぼ横ばい)。
- 再結晶 (Recrystallization):
- 温度による溶解度の差を利用して、不純物を取り除き、純粋な結晶を得る操作。
- 高温で飽和溶液を作り、冷やすと、溶けきれなくなった分が結晶として出てくる。
【超重要】析出量の計算公式
析出量 $x [\text{g}]$ を求めるには、**「溶媒 $100\text{g}$ あたりの比」**で考えるのが鉄則!
$$\frac{\text{析出量 } x}{\text{飽和溶液の質量}} = \frac{\text{溶解度の差 } (S_1 - S_2)}{100 + S_1}$$
- $S_1$: 高温での溶解度
- $S_2$: 低温での溶解度
- ※「水」の量が $100\text{g}$ じゃない場合は、比を使って計算するんだ。
3. 気体の溶解度 ~冷たい炭酸が美味しい理由~
① 温度と溶解度 [cite: chemihigh-78.jpg]
気体は固体とは逆!
- 温度が高くなるほど、気体の溶解度は小さくなる。
- 理由: 熱運動が激しくなり、液体から飛び出してしまうから。
- 例: 温かいサイダーは気が抜けやすい。水を沸騰させると泡(溶けていた空気)が出てくる。
② 圧力と溶解度(ヘンリーの法則) [cite: chemihigh-78.jpg]
- ヘンリーの法則 (Henry's Law):
- 「温度が一定のとき、一定量の溶媒に溶ける気体の質量(または物質量)は、その気体の圧力(分圧)に比例する」。
- 例: 圧力を2倍にすれば、溶けるモル数も2倍になる。
注意点(体積の引っかけ問題)
「溶けた気体の体積」をどう測るかで答えが変わる!
- 標準状態 ($0^\circ\text{C}, 1\text{atm}$) に換算した場合: 圧力に比例して増える。
- その圧力下で測った場合: 圧力によらず一定である。
- (圧力が2倍になるとモル数は2倍になるが、ボイルの法則で体積は1/2に圧縮されるため、打ち消し合って変わらないように見える)
2-2 溶液の濃度(計算完全マスター)
1. いろいろな濃度の表し方
濃度には3つの主役がいる。それぞれの定義(分母が何か?)を確実に覚えよう。
① 質量パーセント濃度 ($\%$) [cite: chemihigh-79.jpg]
小学校からやっている基本の濃度。
- 定義: 溶液の質量に対する溶質の質量の割合。
- 公式:
$$\text{質量パーセント濃度 } [\%] = \frac{\text{溶質の質量 } [\text{g}]}{\text{溶液の質量 } (\text{溶質}+\text{溶媒}) [\text{g}]} \times 100$$
② 物質量濃度 ($\text{mol/L}$) [cite: chemihigh-79.jpg]
化学で最もよく使う濃度。
- 定義: 溶液 $1\text{L}$ あたりに溶けている溶質の物質量 ($\text{mol}$)。
- 公式:
$$\text{物質量濃度 } [\text{mol/L}] = \frac{\text{溶質の物質量 } [\text{mol}]}{\text{溶液の体積 } [\text{L}]}$$
③ 質量モル濃度 ($\text{mol/kg}$) [cite: chemihigh-80.jpg]
次の章(沸点上昇など)で使う特殊な濃度。分母に注意!
- 定義: 溶媒 $1\text{kg}$ あたりに溶けている溶質の物質量。
- 公式:
$$\text{質量モル濃度 } [\text{mol/kg}] = \frac{\text{溶質の物質量 } [\text{mol}]}{\text{溶媒の質量 } [\text{kg}]}$$ - メリット: 温度が変わって溶液の体積が変化しても、この濃度は値が変わらない(質量は温度で変わらないから)。
2. 濃度の換算テクニック(入試頻出!)
「質量パーセント濃度」と「モル濃度」を行ったり来たりする計算は、必ず出題される。
「溶液 $1\text{L}$ ($1000\text{cm}^3$)」 を仮定して計算するのが最短ルートだ!
例題: 密度 $1.2 \text{g/cm}^3$、質量パーセント濃度 $36.5\%$ の濃塩酸 ($\text{HCl}$, 分子量 $36.5$) のモル濃度は?
【解法ステップ】
- 溶液 $1\text{L}$ ($1000\text{cm}^3$) があると仮定する。
- 溶液の質量を求める。
- $1000 [\text{cm}^3] \times 1.2 [\text{g/cm}^3] = 1200 [\text{g}]$
- その中の溶質 ($\text{HCl}$) の質量を求める。
- $1200 [\text{g}] \times 0.365 (36.5\%) = 438 [\text{g}]$
- 溶質を物質量 ($\text{mol}$) に直す。
- $438 [\text{g}] / 36.5 [\text{g/mol}] = 12 [\text{mol}]$
- これが $1\text{L}$ 中のモル数なので...
- 答え: $12 \text{mol/L}$
【まとめ】 第2編 2-1, 2-2のポイント
- 溶解: 「似たもの同士」が溶ける。水は極性、油は無極性。
- 固体の溶解度: 温度が高いとよく溶ける。再結晶の析出量計算は「溶媒$100\text{g}$」基準で!
- 気体の溶解度: 温度が高いと溶けにくい。圧力に比例する(ヘンリーの法則)。
- 濃度の定義:
- $\text{mol/L}$ は「溶液 $1\text{L}$」あたり。
- $\text{mol/kg}$ は「溶媒 $1\text{kg}$」あたり。
- 換算: 迷ったら「溶液 $1\text{L}$」を仮定して質量 $\to$ モル と変換せよ。
これで「溶液と濃度」も攻略完了だ!
特に「濃度の換算」は、一度自分で計算してみないと身につかないから、例題の数値を隠して解き直してみてね。
次は、いよいよ「希薄溶液の性質(沸点上昇・凝固点降下)」かな?
化学の理論分野も後半戦だ。この調子で走り抜けよう!
2-3 希薄溶液の性質
1. 蒸気圧降下と沸点上昇
① 蒸気圧降下 (Vapor Pressure Depression) [cite: chemihigh-81.jpg]
純粋な水に、砂糖や食塩などの不揮発性(蒸発しない)の溶質を溶かすと、水だけのときより蒸発しにくくなる。
- 現象: 溶媒の蒸気圧が低下する。
- 理由: 溶液の表面に溶質粒子が存在するため、溶媒分子が表面から飛び出す(蒸発する)のを邪魔するから。
- ラウールの法則: 「希薄溶液の蒸気圧降下の大きさは、溶質のモル分率に比例する」。
② 沸点上昇 (Boiling Point Elevation) [cite: chemihigh-81.jpg]
蒸気圧が下がると、沸騰させるためにより高い温度が必要になる。
- 現象: 純溶媒よりも溶液の沸点が高くなる現象。
- 公式(超重要!):
$$\Delta t_b = k_b \times m$$ - $\Delta t_b$: 沸点上昇度 $[\text{K}]$(沸点が何℃上がったか)
- $k_b$: モル沸点上昇 $[\text{K} \cdot \text{kg}/\text{mol}]$(溶媒固有の値。水なら$0.52$)
- $m$: 質量モル濃度 $[\text{mol}/\text{kg}]$
- ポイント: 溶質の種類に関係なく、**「粒子の数(質量モル濃度)」**だけで決まる!
2. 凝固点降下 (Freezing Point Depression)
① 現象と理由 [cite: chemihigh-82.jpg]
水に何かを溶かすと、$0^\circ\text{C}$ でも凍らなくなる。
- 理由: 凝固しようとする溶媒分子の邪魔を溶質粒子がするため、より温度を下げてエネルギーを奪わないと結晶化できないから。
- 利用例:
- 融雪剤: 雪道に塩化カルシウムを撒くと、凝固点が下がって氷が溶ける。
- 不凍液: 自動車の冷却水にエチレングリコールを混ぜて、冬でも凍らないようにする。
② 冷却曲線と過冷却 [cite: chemihigh-82.jpg]
図のグラフ(冷却曲線)の読み取りが重要だ。
- 過冷却: 凝固点より温度が下がっても、まだ凍り始めない状態。
- 凝固の開始: きっかけ(刺激)で一気に凍り始め、熱(凝固熱)が出て温度が上がる。
- 凝固点:
- 純溶媒: 凝固中は温度が一定。
- 溶液: 凝固が進むにつれて溶媒が減り、濃度が濃くなるため、凝固点は下がり続ける(右下がりになる)。
③ 凝固点降下の公式 [cite: chemihigh-82.jpg]
沸点上昇と同じ形だ!
$$\Delta t_f = k_f \times m$$
* $\Delta t_f$: 凝固点降下度 $[\text{K}]$
* $k_f$: モル凝固点降下 $[\text{K} \cdot \text{kg}/\text{mol}]$(水なら$1.85$)
* $m$: 質量モル濃度 $[\text{mol}/\text{kg}]$
【注意】電解質の場合
食塩 ($NaCl$) は水中で $Na^+$ と $Cl^-$ の2個に分かれる(電離する)。
沸点上昇や凝固点降下は「粒子の数」で決まるので、濃度を2倍にして計算しないといけない!
($CaCl_2$ なら3倍だ!)
3. 浸透圧 (Osmotic Pressure)
① 浸透と半透膜 [cite: chemihigh-83.jpg]
- 半透膜: 水分子のような小さな粒は通すが、溶質のような大きな粒は通さない膜(セロハン膜、細胞膜など)。
- 浸透: 半透膜を隔てて純水と溶液を接すると、水分子が溶液側へ移動し、溶液を薄めようとする現象。
② 浸透圧の法則(ファント・ホッフの法則) [cite: chemihigh-83.jpg]
浸透を止めるために溶液側に加える圧力を浸透圧 ($\Pi$) という。
希薄溶液では、浸透圧は気体の状態方程式と同じ形になる!
$$\Pi V = nRT$$
変形すると、$\Pi = \frac{n}{V} RT = cRT$
- $\Pi$: 浸透圧 $[\text{Pa}]$
- $V$: 溶液の体積 $[\text{L}]$
- $n$: 溶質の物質量 $[\text{mol}]$
- $R$: 気体定数 ($8.31 \times 10^3$)
- $T$: 絶対温度 $[\text{K}]$
- $c$: モル濃度 $[\text{mol}/\text{L}]$
ポイント: 浸透圧は、溶質の種類によらず、モル濃度と絶対温度に比例する。
2-4 コロイド溶液
1. コロイドとは?
① 粒子の大きさ [cite: chemihigh-84.jpg]
- 直径が $10^{-7} \sim 10^{-5} \text{cm}$ ($1 \sim 100 \text{nm}$) 程度の粒子をコロイド粒子という。
- ろ紙は通るが、半透膜は通らない大きさ(ここテストに出る!)。
② 分類 [cite: chemihigh-84.jpg]
- 分散質: コロイド粒子そのもの(溶質に相当)。
- 分散媒: コロイド粒子を散らしている液体など(溶媒に相当)。
- ゾル: 液体状のコロイド(インク、牛乳)。
- ゲル: ゾルが固まったもの(ゼリー、豆腐、こんにゃく)。
- ゲルを乾燥させたものをキセロゲルという(シリカゲル)。
- エアロゾル: 気体が分散媒のもの(霧、煙)。
2. コロイドの性質(現象名と中身をセットで!)
① チンダル現象 [cite: chemihigh-85.jpg]
- 現象: コロイド溶液に強い光を当てると、光の通路が輝いて見える。
- 理由: 光がコロイド粒子によって散乱されるため。
② ブラウン運動 [cite: chemihigh-85.jpg]
- 現象: コロイド粒子が不規則にジグザグ運動する。
- 理由: 分散媒分子(水分子など)が熱運動して、コロイド粒子に衝突するから。
③ 透析 (Dialysis) [cite: chemihigh-86.jpg]
- 操作: 半透膜の袋にコロイド溶液を入れ、流水中に浸す。
- 効果: コロイド粒子は袋の中に残り、小さなイオンや不純物は外へ出る。コロイドの精製に使われる(人工透析もこれ)。
④ 電気泳動 (Electrophoresis) [cite: chemihigh-86.jpg]
- 現象: 直流電圧をかけると、コロイド粒子が反対符号の電極へ移動する。
- 理由: コロイド粒子は電気を帯びているから。
- 正コロイド: 水酸化鉄(III)など。陰極へ移動。
- 負コロイド: 粘土、硫黄など。陽極へ移動。
3. 沈殿の生成(凝析と塩析)
ここ、違いを間違えやすいから注意!
① 凝析 (Coagulation) [cite: chemihigh-87.jpg]
- 対象: 疎水コロイド(水との親和力が弱い。金属や泥など)。
- 操作: 少量の電解質を加える。
- 理由: 電解質のイオンがコロイドの電荷を中和し、反発力を失って集まる。
- 例: 河口の三角州(泥粒子が海水の塩分で沈殿)。
② 塩析 (Salting out) [cite: chemihigh-87.jpg]
- 対象: 親水コロイド(水との親和力が強い。デンプンやタンパク質)。
- 操作: 多量の電解質を加える。
- 理由: 電解質が水を奪い取る(水和水を奪う)ため、コロイドが析出する。
- 例: 豆腐作り(豆乳というタンパク質コロイドに、にがりを加える)。石鹸の塩析。
【まとめ】 第2編 2-3, 2-4のポイント
- 沸点上昇・凝固点降下: $\Delta t = k \times m$。質量モル濃度を使う!
- 浸透圧: $\Pi V = nRT$。大きな粒子(溶質)は半透膜を通れない。
- コロイドの大きさ: ろ紙は通る、半透膜は通らない。
- 現象の区別:
- 光る $\to$ チンダル現象
- 動く $\to$ ブラウン運動
- 分ける $\to$ 透析
- 沈める $\to$ 凝析(疎水・少量)or 塩析(親水・多量)
これにて「理論化学」の全範囲が終了だ!お疲れ様!
原子の構造から始まって、結合、計算、気体、そしてコロイドまで。化学の基礎となる理論武装は完了したぞ。
次のステージは、いよいよ**「無機化学」や「有機化学」**といった、物質ごとの性質を覚える暗記分野かな?
このテキストを復習に使って、自信を持ってテストに臨んでくれ!応援しているぞ!
ここでは、複数の気体が混ざり合った「混合気体」の圧力の扱い方について学びます。
「気体が混ざると、圧力はどうなるのか?」「それぞれの成分はどのように振る舞うのか?」という疑問を、シンプルな法則で解決していきましょう。
1. ドルトンの分圧の法則
~混ざっても、それぞれの気体はマイペース~
まず、2つの用語を覚えましょう。
- 分圧(ぶんあつ): 成分気体が、単独でその容器全体を占めたときに示す圧力。
- 全圧(ぜんあつ): 混合気体全体が示す圧力。
【重要法則:ドルトンの分圧の法則】
「混合気体の全圧は、各成分気体の分圧の和に等しい」
式で書くと非常にシンプルです。
$$P_{全} = P_A + P_B + \cdots$$
<イメージで理解しよう>
同じ体積・同じ温度であれば、気体の圧力は「壁にぶつかる分子の数」で決まります。
酸素分子が壁を叩く力($P_A$)と、窒素分子が壁を叩く力($P_B$)は、お互いに邪魔し合いません。単純に足し算すれば、全体の壁を押す力($P_{全}$)になります。
2. 分圧と物質量の関係(モル分率)
~圧力の比は、粒の数の比~
気体の状態方程式 $PV = nRT$ を思い出すと、体積($V$)と温度($T$)が一定なら、圧力($P$)は物質量($n$)に比例します。
つまり、**「たくさん入っている気体ほど、分圧も大きい」**ということです。
ここから、非常に重要な計算公式が導かれます。
【公式】分圧の求め方
ある成分気体の分圧は、全圧に「その成分の割合(モル分率)」を掛けることで求められます。
$$\text{分圧} = \text{全圧} \times \frac{\text{その気体の物質量}}{\text{全物質量}}$$
$$P_A = P_{全} \times \frac{n_A}{n_A + n_B}$$
ポイント:
- 分圧の比 = 物質量の比 ($P_A : P_B = n_A : n_B$)
- この関係を使えば、全圧さえわかれば、モル比を使って簡単に分圧が出せます。
3. 実践パターン:混合気体の計算問題
試験でよく出る2つのパターンの解き方を整理します。
パターンA:同じ容器に最初から混ぜて温度を変える等の場合
アプローチ: まず「全物質量」で「全圧」を求め、その後に比率で分ける。
- 全物質量 $n_{全} = n_A + n_B + \dots$ を求める。
- 状態方程式 $P_{全}V = n_{全}RT$ で、全圧 $P_{全}$ を計算する。
- 物質量の比を使って、各分圧を求める。
例題の要約(テキストp.100より)
5.0Lの容器に酸素0.42mol、窒素0.21mol、アルゴン0.84molを入れ、17℃(290K)に保つ。
- 全物質量: $0.42 + 0.21 + 0.84 = 1.47 \, \text{mol}$
- 全圧: $P_{全} = \frac{1.47 \times 0.082 \times 290}{5.0} \fallingdotseq 7.0 \, \text{atm}$
- 窒素の分圧: 全体の $1.47$ のうち窒素は $0.21$ なので、
$P_{N_2} = 7.0 \times \frac{0.21}{1.47} = 1.0 \, \text{atm}$
パターンB:別々の容器に入った気体をコックを開いて混ぜる場合
アプローチ: 混合前の圧力は使えません!「ボイルの法則」で混合後の分圧を計算してから足します。
【手順】
- 体積の変化に注目: 2つの容器をつなぐと、気体は両方の容器全体($V_{全} = V_A + V_B$)に広がります。
- ボイルの法則: 「広がった分だけ圧力が下がる」ことを計算します。
- 気体Aの分圧 $P'_A$: $P_A \times V_A = P'_A \times V_{全}$
- 気体Bの分圧 $P'_B$: $P_B \times V_B = P'_B \times V_{全}$
- 最後に足す: $P_{全} = P'_A + P'_B$
覚え方
「まずはそれぞれ、広い部屋に引っ越した後の圧力を計算する。最後にそれを足し合わせる。」
4. 水上置換と蒸気圧
~水蒸気の「割り込み」に注意~
水上置換法で気体を集めるとき、集めた気体の中には、必ず水蒸気($H_2O$)が混ざっています。
そのため、測定した圧力(大気圧と同じにするのが一般的)は、「目的の気体」+「水蒸気」の合計になっています。
純粋な気体の圧力を知りたいときは、水蒸気圧を引く必要があります。
$$P_{気体} = P_{大気圧} - P_{水蒸気圧}$$
- $P_{大気圧}$: メスシリンダー内の水面を外の水面と合わせたときの圧力。
- $P_{水蒸気圧}$: その温度における飽和水蒸気圧(問題文で与えられます)。
まとめ:これだけは押さえよう!
- 足し算の法則: 全圧 = みんなの分圧の合計 ($P = P_A + P_B$)
- 比例の法則: 分圧の比 = 物質量(モル)の比
- コック開放問題: まずボイルの法則で、広がった後の「分圧」を計算してから足す。
- 水上置換: 全圧から水蒸気分を引くのを忘れない。