高校化学の基礎

【6章】化学反応と熱エネルギーの基本

最終更新日: 2026-01-10 21:37:50

作成者: カリスマ講師

化学反応と熱エネルギーの基本

はじめに:化学反応は「物質」だけでなく「熱」も変わる!

これまで化学といえば、「物質Aと物質Bがくっついて物質Cになる」という物質の変化ばかりを見てきました。しかし、現実の世界では、化学反応が起きるときには必ず**「熱の出入り」**がセットで起こります。

この章では、物質の変化と一緒に起こる**「エネルギー(熱)のやり取り」**に注目していきます。

1. 「温かくなる」か「冷たくなる」か?(発熱と吸熱)

反応が起きたとき、周りの温度がどうなるかで、反応は大きく2つに分けられます。

① 発熱反応(はつねつはんのう)

② 吸熱反応(きゅうねつはんのう)

2. 「反応熱」ってなに?

 

化学反応に伴って出入りする熱の量のことを**「反応熱」と呼びます。

これには大事な3つのルール**があります。

  1. 主役は「1mol(モル)」:
    「この物質 1mol が反応したとき、何kJ(キロジュール)の熱が出るか(吸うか)」で表します。
  1. 条件:
    温度や圧力で熱量は変わるため、通常は $25^\circ C$、1気圧 の状態を基準にします。
  2. プラスとマイナス(重要!):

3. 代表的な4つの反応熱

 

反応の種類によって名前がついていますが、全部覚える必要はありません。「何をした時の熱か」を理解しましょう。

熱の種類定義(主役 1mol がどうなる時?)特徴
燃焼熱物質が酸素と反応して燃えるとき必ず発熱します(燃えて冷える火はありません)。
生成熱成分元素の単体から化合物ができるとき発熱も吸熱もあります。
中和熱酸と塩基が反応して水 1mol ができるとき必ず発熱します。
溶解熱物質が大量の溶媒(水など)に溶けるとき発熱(硫酸など)も吸熱(硝酸カリウムなど)もあります。

ポイント: 「中和熱」の定義は「水 ($H_2O$) が 1mol できるとき」です。酸や塩基の量ではない点に注意しましょう。

4. なぜ熱が出たり入ったりするの?(エネルギー図の理解)

ここが一番の「なるほど!」ポイントです。

すべての物質は、それぞれの状態に応じた**「エネルギー(熱含量・エンタルピー)」**を内部に持っています。これを「お財布の中身」に例えてみましょう。

A. 発熱反応のしくみ(エネルギーが高い→低い)

B. 吸熱反応のしくみ(エネルギーが低い→高い)

5. どうやって測るの?

「断熱容器(熱が逃げない入れ物)」を使って実験します。

原理:

「水の温度が $X^\circ C$ 上がった」ということは「水が得た熱量 = 物質が放出した熱量」と考えて計算します。

 

「熱化学」の言葉の意味と、「なぜ熱が出るのか(エネルギーの差)」というイメージを持てれば、このパートは完璧です。

熱化学方程式の完全攻略

 

1. 「熱化学方程式」ってなに?

 

普通の化学反応式に、「熱の出入り」の情報を書き加えた式のことです。

化学反応式が「物質の変化」を表すレシピなら、熱化学方程式は**「物質 + エネルギーの収支」を表す家計簿**のようなものです。

最大の特徴:矢印(→)ではなく等号(=)を使う!

これが一番の違いです。「左辺(反応前の物質のエネルギー)」と「右辺(反応後の物質のエネルギー + 出入りした熱)」が**等しい(釣り合っている)**という意味で = で結びます。

2. 絶対に守るべき「5つの鉄則」

 

教科書の内容を整理すると、以下の5つのルールに集約されます。これさえ守れば間違えません。

鉄則①:矢印 → をやめて = にする

鉄則②:右辺に熱量を書く(符号に注意!)

ここが最重要です。

鉄則③:物質の状態 (固)(液)(気) を必ず書く

同じ物質でも、状態(氷か水か水蒸気か)によって持っているエネルギーが違うからです。

鉄則④:係数は「分数」でもOK!

普通の化学反応式では「係数は最も簡単な整数比」でしたが、熱化学方程式では**「主役の物質 1mol」**を基準にします。

鉄則⑤:化学式の後ろに aq をつけると「大量の水」

 

物質を水に溶かす反応(溶解)を表すとき、水($H_2O$)を大量に使うことを aq (アクア)という記号で表します。

3. 実際の式の作り方(ステップ解説)

 

教科書の例題(水素が燃えて液体の水ができる:発熱286kJ)を使って、式を作ってみましょう。

  1. まず普通の化学反応式を書く

    $$2H_2 + O_2 \rightarrow 2H_2O$$
  2. 主役(水素)を 1mol に合わせる
    全体を2で割ります。

    $$H_2 + \frac{1}{2}O_2 \rightarrow H_2O$$
  3. 状態を書き、矢印を=にする

    $$H_2(気) + \frac{1}{2}O_2(気) = H_2O(液)$$
  4. 熱量を付け足す(発熱なら+、吸熱なら-)

    $$H_2(気) + \frac{1}{2}O_2(気) = H_2O(液) + 286\text{kJ}$$

    これで完成です!

4. 化学反応式 vs 熱化学方程式

 

混同しやすい2つの違いを表にまとめました。

 化学反応式熱化学方程式
つなぐ記号矢印 ($\rightarrow$)等号 ($=$)
係数の意味反応する「個数」や「モル」の比反応する**「モル(mol)」そのもの**
係数のルール原則、整数のみ分数もOK (主役を1にするため)
状態の記述書かないことが多い必須 (固・液・気)
熱の記述書かない右辺に $\pm \dots \text{kJ}$ を書く

5. 解くときのコツ(教科書 p.143 例題より)

問題を解くときは、「何が 1mol なのか?」(=反応の主役は誰か?)に注目してください。

まとめ:この章でできるようになるべきこと

  1. 用語の理解: 「発熱」「吸熱」の違いがわかる。
  2. 式のルール: 「=を使う」「状態を書く」「発熱は+、吸熱は-」を守れる。

式の作成: 文章(「〜の燃焼熱は〇〇kJである」)から、正しい熱化学方程式が書ける。

 

ヘスの法則と計算の魔法

 

1. ヘスの法則(総熱量保存の法則)とは?

 

山登りをイメージしてください。「麓(ふもと)」から「山頂」へ行くとき、まっすぐ登っても、くねくね道を登っても、ロープウェーを使っても、**「高さの変化」**は同じですよね?

化学反応のエネルギーもこれと同じです。

具体例:水ができるとき

水素と酸素から「液体の水」ができるまでには、2つのルートがあります。

  1. 直接ルート: 水素と酸素が反応して、いきなり「水(液体)」になる(発熱 $286\text{kJ}$)。
  2. 寄り道ルート: 一旦「水蒸気(気体)」になって(発熱 $242\text{kJ}$)、そこから冷えて「水(液体)」になる(発熱 $44\text{kJ}$)。

ヘスの法則通り、$242 + 44 = 286$ となり、どちらのルートでも合計の熱量は同じになります。

2. ヘスの法則の実験(証明)

 

教科書では、「固体の水酸化ナトリウム($NaOH$)」と「塩酸($HCl$)」を反応させる実験でこれを確かめています。

  1. まず、固体の $NaOH$ を水に溶かす(溶解熱 $Q_1$)。
  2. その水溶液を、塩酸と混ぜる(中和熱 $Q_2$)。

実験の結果、$Q_3$ と $Q_1 + Q_2$ はほぼ等しくなることがわかります。つまり、一気に反応させても、段階を踏んでも、熱の合計は変わらないのです。

3. 【最重要】熱化学方程式の計算テクニック

 

ここがテストに出るポイントです!

ヘスの法則のおかげで、熱化学方程式は数学の連立方程式のように「足したり引いたり」して解くことができます。

手順:未知の熱化学方程式をつくる

 

「黒鉛($C$)と酸素から、一酸化炭素($CO$)ができる反応熱 $Q$」を知りたいとします。

しかし、実験で $C$ を燃やすと $CO$ を通り越して $CO_2$ になりやすいため、直接 $Q$ を測るのは難しいのです。そこで計算で求めます。

【使える式(ヒント)】

① $C + O_2 = CO_2 + 394\text{kJ}$ (Cの燃焼熱)

② $CO + \frac{1}{2}O_2 = CO_2 + 283\text{kJ}$ (COの燃焼熱)

【求めたい式(ゴール)】

③ $C + \frac{1}{2}O_2 = CO + Q\text{kJ}$

【解き方:消去法】

ゴールの式③には、$CO_2$ がありません。また、$CO$ は右辺にあります。

そこで、①式から②式を引き算して $CO_2$ を消します。

 

$$\begin{aligned} (C + O_2) - (CO + \frac{1}{2}O_2) &= (CO_2 + 394) - (CO_2 + 283) \\ C + \frac{1}{2}O_2 - CO &= 111 \\ C + \frac{1}{2}O_2 &= CO + 111\text{kJ} \end{aligned}$$

これで、$Q = 111\text{kJ}$ だとわかりました!

初心者のためのコツ

パズルだと思ってください。「ゴールの式にある物質」を残し、「ゴールの式にない物質」を消すように、式を足したり引いたりすればOKです。

第2部:結合エネルギーと反応熱

 

次に、「なぜ反応すると熱が出たり入ったりするの?」という理由を、原子レベルの**「結合」**から解説します。

1. 結合エネルギーとは?

 

原子と原子は、しっかりと手をつないで分子を作っています(共有結合)。この手を引きはがしてバラバラにするのに必要なエネルギーを「結合エネルギー」といいます。

2. 結合エネルギーを使った計算方法

 

すべての反応は、**「①いまある結合を全部切ってバラバラにする」→「②新しい組み合わせで結合を作り直す」**と考えることができます。

公式(イメージ)

 

$$\text{反応熱} = (\text{あとでできる結合のエネルギー}) - (\text{最初に切る結合のエネルギー})$$

例題:アンモニアの生成熱

 

$N_2$ と $H_2$ から $NH_3$ を作ります。

  1. 材料をバラバラにする(エネルギーの支払い):
  1. 新しく組み立てる(エネルギーの受け取り):
  1. 収支決算:

式全体では $N_2 + 3H_2 = 2NH_3 + 78\text{kJ}$ となります。

アンモニア1molあたりの生成熱なら、これを2で割って $39\text{kJ/mol}$ となります。

全体のまとめ(次のステップへ)

 

  1. ヘスの法則: 反応熱はルートによらず一定である(スタートとゴールだけで決まる)。
  2. 熱化学方程式の計算: 式同士を足し引きして、未知の反応熱を求められる。
  3. 結合エネルギー: 「結合を切るエネルギー」と「結合ができるエネルギー」の差額が反応熱になる。

ここまでで「化学反応と熱」の章(第1章)は完了です!

酸と塩基の正体とは?

1. 「酸(さん)」と「塩基(えんき)」ってなに?

昔の人は、味や手触りでこれらを区別していました。

2. アレニウスの定義(水の中での話)

19世紀、スウェーデンの化学者アレニウスは、これらを「どのようなイオンを出すか」で科学的に定義しました。これが最も基本の定義です。

① アレニウスの酸

「水に溶けて、水素イオン ($H^+$) を出す物質」

② アレニウスの塩基

「水に溶けて、水酸化物イオン ($OH^-$) を出す物質」

【注意!】アンモニア($NH_3$)の謎

アンモニアの分子には $OH$ がありませんが、水に溶けると塩基になります。なぜでしょう?

3. ブレンステッドの定義(もっと広い話)

アレニウスの定義には弱点がありました。「水に溶けない場合」や「水がない場所での反応」を説明できないのです。

そこでデンマークのブレンステッドは、定義を拡張しました。キーワードは**「キャッチボール」**です。

具体例:アンモニアと塩化水素の空中戦

水がない状態で、アンモニアガスと塩化水素ガスが反応して白煙(塩化アンモニウム)ができる反応を見てみましょう。

$$NH_3(気) + HCl(気) \rightleftharpoons NH_4^+ + Cl^-$$

ポイント:

水 ($H_2O$) も、相手によって酸になったり塩基になったりします。

4. ちょっと特殊なやつ:両性水酸化物

水酸化アルミニウム $Al(OH)_3$ のように、相手によって態度を変える「コウモリ」のような物質がいます。

これを**「両性水酸化物」**といいます。

 

ここまでが「前半:定義」の解説です。

 

「$H^+$ を出すのが酸、$OH^-$ を出すのが塩基」という基本(アレニウス)を押さえつつ、「$H^+$ のキャッチボール」という広い定義(ブレンステッド)があることを理解できればOKです。

 

酸・塩基の「強さ」と「価数」

1. 「強い」酸と「弱い」酸の違い(電離度)

「酸が強い」というのは、単に濃度が濃いという意味ではありません。水に入れたとき、どれだけ張り切ってイオン($H^+$ や $OH^-$)を出すか、という「やる気」のことを指します。これを数値にしたのが**「電離度(でんりど)」**です。

電離度 $\alpha$(アルファ)のイメージ

100個の酸の分子を水に入れたと想像してください。

計算公式

 

$$\text{電離度 } \alpha = \frac{\text{電離した物質量(mol)}}{\text{溶かした物質量(mol)}}$$

 

つまり、「溶かしたうちの何割がイオンになったか」という割合です。

2. 覚えておくべき代表選手(強・弱の分類)

テストでは「どれが強酸か?」がよく問われます。「強」のグループは数が少ないので、こちらを暗記して、それ以外は「弱」と判断するのがコツです。

分類代表的な物質(ここを覚えよう!)特徴
強酸塩酸($HCl$)、硝酸($HNO_3$)、硫酸($H_2SO_4$)ほぼ100%電離する。危険な薬品が多い。
弱酸酢酸($CH_3COOH$)、炭酸($H_2CO_3$)、硫化水素($H_2S$)一部しか電離しない。食品に含まれるものも多い。
強塩基

水酸化ナトリウム($NaOH$)、水酸化カリウム($KOH$)

 

水酸化カルシウム($Ca(OH)_2$)、水酸化バリウム($Ba(OH)_2$)

アルカリ金属・アルカリ土類金属の水酸化物。
弱塩基アンモニア($NH_3$)水酸化銅(II)など、沈殿するものもここに含まれる。

注意: 弱酸や弱塩基は「電離度が小さい」だけで、反応しないわけではありません。

3. 「価数(かすう)」とは?(強さとは別物!)

(教科書 p.157)

価数とは、1つの分子が最大で何個の $H^+$(または $OH^-$)を出せるかという「数」のことです。

よくあるひっかけ問題

重要: 「2価の酸だから強い」とは限りません。

4. 多段階電離(2回に分けて出す)

2価以上の酸($H_2SO_4$など)は、一度に全ての $H^+$ を放出するのではなく、段階を踏んで放出します。

一般に、1個目を出すのは簡単ですが、2個目、3個目となるにつれて放出するのが難しくなり、電離度は小さくなります。

第2章「酸と塩基」前半まとめ

ここまでで、酸・塩基の基本スペックである「定義」「強弱(電離度)」「価数」を学びました。

  1. 定義: 水に溶けて $H^+$ を出すのが酸、$OH^-$ を出すのが塩基。
  2. 強弱: たくさんイオンになるのが「強」、サボるのが「弱」。
  3. 価数: 持っている $H^+$ や $OH^-$ の個数(強さとは無関係)。

これらは、次のステップである「中和反応」や「pH(ピーエイチ)の計算」の基礎となります。

 

「水」の秘密と「pH」の決まり

1. 水は「ただの水」ではない(水のイオン積)

純粋な水 ($H_2O$) は、電気を通さない絶縁体だと思われがちですが、実はごくわずかに「電離」しています。

5億個以上の水分子のうち、たった1個くらいの割合で、勝手にイオンに分かれています。

 

$$H_2O \rightleftharpoons H^+ + OH^-$$

黄金のルール:水のイオン積 $K_w$

ここで、化学Ⅱや入試までずっと使う「絶対のルール」が登場します。

温度が一定(25℃)なら、どんな水溶液(酸性でも塩基性でも)であっても、以下の掛け算の答えは常に一定になります。

 

$$[H^+] \times [OH^-] = 1.0 \times 10^{-14} \, (\text{mol/l})^2$$

この一定の値 ($1.0 \times 10^{-14}$) を**「水のイオン積 ($K_w$)」**と呼びます。

シーソーの関係

このルールのおかげで、片方が増えれば、もう片方は必ず減ります。

2. 酸性・中性・塩基性の基準

「中性」とは、酸と塩基の成分が互角の状態です。

3. 「pH(ピーエイチ)」の登場

水素イオン濃度 $[H^+]$ は $0.0000001$ のように桁が多すぎて扱いづらいです。そこで、「$10$ の右肩にある数字(指数)」だけを取り出して表すことにしました。これが pH(水素イオン指数) です。

定義式(公式)

 

$$\text{pH} = -\log_{10} [H^+]$$

 

難しく見えますが、基本は**「$10$ の何乗か?」の「マイナスを取った数字」**だと考えればOKです。

【イメージ図】

数字の数直線で見ると、以下のようになります。

【後半】計算テクニックと測定方法

4. pHの計算パターン(ここがテストに出る!)

パターンA:酸のpHを求める(素直なパターン)

「$0.10 \text{mol/l}$ の酢酸(電離度 $0.013$)」のpHは?

  1. $[H^+]$ を出す:
    濃度 $\times$ 電離度 $= 0.10 \times 0.013 = 1.3 \times 10^{-3} \text{mol/l}$
  2. 公式に入れる:
    $\text{pH} = -\log(1.3 \times 10^{-3})$
    $= 3 - \log 1.3$
    (問題文に $\log 1.3 = 0.11$ とあるので)
    $= 3 - 0.11 = 2.89$

パターンB:塩基のpHを求める(ワンクッション必要)

ここが最大のひっかけポイントです。 塩基(アンモニアなど)からは、直接 $[H^+]$ は出ません。$[OH^-]$ が出ます。

「$0.10 \text{mol/l}$ のアンモニア水(電離度 $0.013$)」のpHは?

  1. まず $[OH^-]$ を出す:
    濃度 $\times$ 電離度 $= 0.10 \times 0.013 = 1.3 \times 10^{-3} \text{mol/l}$
    これは $H^+$ ではありません!
  2. 「水のイオン積」を使って $[H^+]$ に変換する:
    $[H^+] = \frac{1.0 \times 10^{-14}}{[OH^-]} = \frac{1.0 \times 10^{-14}}{1.3 \times 10^{-3}} = \frac{1}{1.3} \times 10^{-11}$
  3. pHを計算する:
    $\text{pH} = -\log(\frac{1}{1.3} \times 10^{-11}) \approx 11.1$

裏ワザ(p.163 参考):

$\text{pH} + \text{pOH} = 14$ という関係があります。

塩基の場合は、一旦 $\text{pOH}$($OH$バージョンの指数)を出して、14から引くと早いです。

5. 薄めたらどうなる?(希釈)

注意!

酸をいくら薄めても、決してアルカリ性(pH 8以上)にはなりません。限りなくpH 7に近づくだけです。

6. どうやって測る?(指示薬とpH計)

pHを目で見て知るために**「pH指示薬(しじやく)」**を使います。特定のpHを超えると色が変わる薬品です。

【必ず覚えるべき2つ】

  1. メチルオレンジ (MO):
  1. フェノールフタレイン (PP):

これらは、次の「中和滴定(ちゅうわてきてい)」で、反応の終了を知る合図として使われます。

 

中和反応の「仕組み」と「計算」

1. 中和反応(ちゅうわはんのう)とは?

「酸」と「塩基」を混ぜると、お互いの性質を打ち消し合います。これを中和といいます。

主役は、酸の $H^+$ と、塩基の $OH^-$ です。

① 水ができる

酸と塩基が出会うと、必ず水 ($H_2O$) が生まれます。

 

 

$$H^+ + OH^- \rightarrow H_2O$$

 

これが中和の正体です。

② 「塩(えん)」ができる

主役の $H^+$ と $OH^-$ が水になって去ったあと、残されたイオン同士がくっついたものを**「塩(えん)」**と呼びます。

ポイント: 「塩(えん)」=「食塩」だけではありません。中和でできる物質の総称です(例:$Na_2SO_4$, $NH_4Cl$ など)。

2. 完全に中和する条件(量的関係)

ここから計算の話に入ります。

酸と塩基を「過不足なく(ぴったり)」中和させるには、どうすればよいでしょうか?

「同じ体積混ぜればいい」のではありません。**「$H^+$ と $OH^-$ の個数(モル)を同じにする」**ことが条件です。

「価数(かすう)」という罠に注意

図を見てください。

つまり、$H_2SO_4$ は $HCl$ の 2倍の戦力 を持っています。

したがって、1mol の硫酸 ($H_2SO_4$) を中和するには、1mol の $NaOH$ では足りず、2mol の $NaOH$ が必要になります。

3. 必殺の「中和の公式」

中和の計算問題は、すべて以下のたった1つの式で解けます。これを暗記してください。

 

$$酸のモル数 \times 価数 = 塩基のモル数 \times 価数$$

これを詳しい式(濃度と体積)に直すと、こうなります。

 

$$a \times c \times \frac{v}{1000} = b \times c' \times \frac{v'}{1000}$$

コツ:

両辺とも体積が $\text{ml}$ なら、分母の $1000$ は省略して計算してもOKです(両辺を1000倍したと考えればよい)。

 

 

$$a \times c \times v = b \times c' \times v'$$

例題で確認

「$0.20 \text{mol/l}$ の塩酸 $30 \text{ml}$ を中和するのに必要な $NaOH$(式量40)は何gか?」

  1. 酸チームの $H^+$ の量:
    $1(\text{価}) \times 0.20(\text{mol/l}) \times \frac{30}{1000}(\text{l}) = 0.006 \text{mol}$
  2. 塩基チームの $OH^-$ の量:
    $NaOH$ の重さを $x$グラムとすると、モル数は $\frac{x}{40}$ mol。
    $1(\text{価}) \times \frac{x}{40}$
  3. イコールで結ぶ:
    $0.006 = \frac{x}{40}$
    $x = 0.24 \text{g}$

4. 複数の酸・塩基が混ざったら?

「塩酸と硫酸の混合液」のように、酸や塩基が複数種類あっても考え方は同じです。

**「酸チーム全員が出す $H^+$ の合計」と「塩基チーム全員が出す $OH^-$ の合計」**が釣り合えばOKです。

 

$$\text{(酸Aの} H^+ \text{)} + \text{(酸Bの} H^+ \text{)} = \text{(塩基Cの} OH^- \text{)} + \dots$$

教科書の例題(p.169)のように、複数の物質が登場しても、一つずつ足し算していけば解くことができます。

 

ここまでが「中和の理論と計算」です。

 

「$acv = bc'v'$」の公式さえ使いこなせれば、中和の計算は怖くありません。

 

中和滴定と滴定曲線

1. 中和滴定(ちゅうわてきてい)とは?

濃度がわからない酸(または塩基)があるとき、濃度がわかっている塩基(または酸)を使って、正確な濃度を突き止める実験のことを「中和滴定」といいます。

実験の手順(イメージ)

  1. 濃度を知りたい「酸」をコップ(コニカルビーカー)に入れます。
  2. そこに「pH指示薬(色がかわる薬)」を数滴入れます。
  3. 上から「標準溶液(塩基)」をポタッ、ポタッと少しずつ垂らしていきます。
  4. コップの中の色が**「パッ」と変わった瞬間**が、中和完了の合図(中和点)です。
  5. そのときまでに使った塩基の量を測れば、計算($acv = bc'v'$)で酸の濃度がわかります。

2. 実験に使う道具(名前と形を覚えよう!)

 

 

titration apparatusの画像

Shutterstock

 

この実験は「正確さ」が命なので、専用のガラス器具を使います。

  1. ホールピペット: 「決まった体積(例:10ml)」を正確に測り取るストローのような器具。
  2. メスフラスコ: 正確な濃度の溶液を作るときに使う、底が平らなフラスコ。
  3. ビュレット: 目盛りがついていて、下のコックをひねると液を滴下できる細長い管。垂らした量を正確に読み取ります。
  4. コニカルビーカー: 下で反応させるための三角フラスコのような容器。振っても液が飛び散りにくい形をしています。

3. 「滴定曲線」と指示薬の選び方(最重要)

塩基を少しずつ加えていくと、pHはどう変化するのか? それをグラフにしたのが**「滴定曲線(てきていきょくせん)」です。

すべてのグラフに共通するのは、中和点付近でpHがエレベーターのように急上昇する(pH飛躍)**ことです。

この「急上昇(ジャンプ)」の場所によって、使える指示薬(MOかPPか)が決まります。

パターン①:強酸 ($HCl$) × 強塩基 ($NaOH$)

パターン②:弱酸 ($CH_3COOH$) × 強塩基 ($NaOH$)

お酢を劇薬で中和するイメージです。

パターン③:強酸 ($HCl$) × 弱塩基 ($NH_3$)

強い酸を、弱い塩基で中和します。

覚え方のコツ(指示薬選び)

パターン④:弱酸 × 弱塩基(p.173)

ジャンプがほとんど起きず、ダラダラとpHが上がるため、中和点がわかりません。

したがって、滴定には向きません(指示薬も使えません)。

4. 全体のまとめ

この教科書(化学IB 第3編)の範囲を一通り解説しました。

ポイントを振り返ります。

  1. 熱化学:
  1. 酸と塩基:
  1. 中和滴定:

これで、ご提示いただいた画像の範囲の解説はすべて完了です。

もし、特定の計算問題の解き方が知りたい、あるいはもっと先の単元(酸化還元など)に進みたいなどのご要望があれば、いつでもお知らせください!

 

「塩(えん)」の正体と3つの分類

1. そもそも「塩(えん)」ってなに?

料理に使う「食塩(塩化ナトリウム)」だけが塩ではありません。化学の世界では、「酸の陰イオン」と「塩基の陽イオン」がくっついた物質をすべて「塩」と呼びます。

つまり、中和反応で「水」と一緒に生まれる物質は、すべて「塩」です。

塩を作るいろいろな方法

一番有名なのは「酸+塩基」ですが、他にも塩ができる反応はあります。

特に重要なのが**「揮発性(きはつせい)の酸の遊離」**という反応です(p.175 ⑬)。

2. 塩の「3つの分類」(超重要!)

ここが最大のひっかけポイントです。

塩は、その**「形(化学式)」**によって3種類に分けられます。

「水に溶けたときの性質(酸性・アルカリ性)」ではないことに注意してください!

分類名定義(化学式の見た目)具体例注意点
正塩(せいえん)$H^+$ も $OH^-$ も残っていない塩$NaCl$, $Na_2SO_4$, $CH_3COONa$「中性塩」とも言いますが、水溶液が中性とは限りません!
酸性塩酸の $H$ が残っている塩$Na\mathbf{H}CO_3$, $Na\mathbf{H}SO_4$形の中に $H$ があるから「酸性塩」。液性はアルカリ性の場合もあります。
塩基性塩塩基の $OH$ が残っている塩$Cu\mathbf{(OH)}Cl$, $MgCl\mathbf{(OH)}$形の中に $OH$ があるから「塩基性塩」。

初心者のための見分け方:

化学式を見て、真ん中に H が挟まっていたら「酸性塩」、OH が挟まっていたら「塩基性塩」、何もなければ「正塩」です。

3. 塩の名前のつけ方

基本は「陰イオンの名前」+「陽イオンの名前」の順で呼びます(化学式とは逆順)。

$NaHSO_4$: 硫酸水素イオン ($HSO_4^-$) + ナトリウム ($Na^+$) $\rightarrow$ 硫酸水素ナトリウム

 

塩を溶かすと何性?(塩の加水分解)

1. 結論:液性の見分け方(勝ち負けのルール)

まず、理屈の前に「結果」を覚えましょう。

その塩が「どんな酸」と「どんな塩基」から生まれたか(親は誰か)を考えます。ルールは**「強い方の性質が現れる」**です。

親の組み合わせ液性理由(イメージ)
酸 + 塩基中性両方強いので引き分け。
酸 + 弱塩基酸性酸が勝つので酸性になる。
弱酸 + 塩基塩基性塩基が勝つので塩基性になる。
弱酸 + 弱塩基(場合による)※高校化学ではあまり出ません。

2. 理由:なぜそうなる?(加水分解のメカニズム)

なぜ「弱い方の親」を持つイオンは、水と反応してしまうのでしょうか?

それは、**「弱酸(や弱塩基)は、イオンの状態でいるのが苦手だから」**です。

① 酢酸ナトリウム(塩基性になる理由)

$CH_3COONa$ を水に溶かすと、$CH_3COO^-$(酢酸イオン)と $Na^+$ に分かれます。

そこで、$CH_3COO^-$ は水分子 ($H_2O$) から無理やり $H^+$ を奪って元の姿に戻ろうとします。

 

 

$$CH_3COO^- + H_2O \rightleftharpoons CH_3COOH + \mathbf{OH^-}$$

 

結果として、水中に $OH^-$(アルカリ性の元)が余ってしまうため、塩基性になります。これを**「塩の加水分解」**といいます。

② 塩化アンモニウム(酸性になる理由)

$NH_4Cl$ を水に溶かすと、$NH_4^+$(アンモニウムイオン)と $Cl^-$ に分かれます。

 

$$NH_4^+ + H_2O \rightleftharpoons NH_3 + H_2O + \mathbf{H^+}$$

 

(正確には $NH_4^+ \rightleftharpoons NH_3 + H^+$)

結果として、水中に $H^+$(酸性の元)を出してしまうため、酸性になります。

3. 要注意!「酸性塩」の液性(例外あり)

「酸性塩($H$ が残っている塩)」は、必ず酸性になるわけではありません。ここがテストの狙い目です。

パターンA:重曹(炭酸水素ナトリウム $NaHCO_3$)

パターンB:硫酸水素ナトリウム ($NaHSO_4$)

全体のまとめ(第2章の修了)

この章で学んだ「塩の性質」のポイントは以下の通りです。

  1. 塩の定義: 酸の陰イオンと塩基の陽イオンが結合したもの。
  2. 3つの分類: 化学式に $H$ があれば「酸性塩」、$OH$ があれば「塩基性塩」、なければ「正塩」。
  3. 液性のルール: 「強い親の性質」が現れる(強酸+弱塩基=酸性)。
  4. 加水分解: 弱い親を持つイオンが、水と反応して元の姿に戻ろうとする現象。

これで「酸と塩基」の大きな山場は越えました。

この知識があれば、入試問題の「pHの並び替え問題」や「物質の推定問題」も解けるようになります。

 

酸化数(さんかすう)の計算ルール

(教科書 p.186〜188 解説)

1. 酸化数ってなに?

(教科書 p.186)

「電子($e^-$)をどれだけ得したか、損したか」を表す数値です。

2. 計算のための「4つの鉄則」

(教科書 p.186〜187)

パズルのルールだと思って、この4つだけ覚えてください。優先順位の高い順です。

ルール①:独りぼっちは「0」 (単体)

他の元素とくっついていない原子(単体)は、電子の貸し借りがないので必ず 0 です。

ルール②:単純なイオンは「イオンの価数」 (単原子イオン)

イオンの右上の数字がそのまま酸化数になります。

ルール③:化合物中の $H$ は「+1」、$O$ は「-2」

(教科書 p.186)

他の原子とくっついている時(化合物)は、基本的にこの値を使います。

ルール④:合計は「0」または「イオンの電荷」

(教科書 p.187)

3. 実践!酸化数の計算(方程式を立てる)

(教科書 p.187 例題)

ルールを使って、分からない原子($x$)の酸化数を計算してみましょう。

【例題】 硫酸 ($H_2SO_4$) の中の硫黄 ($S$) の酸化数は?

  1. 分かっていること:
  1. 式を立てる:

    $$(\text{Hが2個}) + (\text{Sが1個}) + (\text{Oが4個}) = 0$$
    $$(+1 \times 2) + x + (-2 \times 4) = 0$$
  2. 計算する:

    $$2 + x - 8 = 0$$
    $$x - 6 = 0$$
    $$x = +6$$

    答え:+6

このように、簡単な一次方程式で求められます。

4. 酸化・還元の判定(増えたか減ったか?)

(教科書 p.187〜188)

酸化数がわかれば、反応の前後で数字を比べるだけで判定できます。

判定の例:銅の精錬

(教科書 p.187 図30)

 

 

$$CuO + H_2 \rightarrow Cu + H_2O$$

redox reaction electron transferの画像Shutterstock

 

5. 酸化還元ではない反応もある

(教科書 p.188 例題(2))

すべての反応が酸化還元ではありません。例えば、前章でやった「中和反応」などは、酸化数が変化しません。

第3章「酸化還元」前半まとめ

(教科書 p.188 まとめ表)

最後に、定義と酸化数の関係をまとめた最強の表を確認しましょう。

 酸化 (Oxidation)還元 (Reduction)
酸素 $O$結合する離れる
水素 $H$離れる結合する
電子 $e^-$放出する(失う)受け取る
酸化数増加する ($\nearrow$)減少する ($\searrow$)

この表と「4つの計算ルール」さえあれば、どんな複雑な反応式でも怖くありません。

 

酸化剤と還元剤の正体

(教科書 p.189〜191 解説)

1. 「酸化剤」と「還元剤」ってなに?

(教科書 p.189)

言葉の響きに騙されないようにしましょう。ここが最大のつまずきポイントです。

覚え方のコツ:

「旅行代理店」は「(自分ではなく)お客さんを旅行させる人」ですよね?

同じように「酸化剤」は「(自分ではなく)相手を酸化させるヤツ」と覚えましょう。

2. スター選手名鑑(必ず覚えるべき物質)

(教科書 p.190 表6)

誰が酸化剤で、誰が還元剤なのか? 教科書 p.190 の表は宝の地図です。特に以下の「代表選手」は、どう変化するか(半反応式)を書けるようにしておく必要があります。

代表的な酸化剤(電子を欲しがる)

  1. 過マンガン酸カリウム ($MnO_4^-$):
  1. 二クロム酸カリウム ($Cr_2O_7^{2-}$):
  1. ハロゲン ($Cl_2, Br_2, I_2$):

代表的な還元剤(電子をあげたい)

  1. シュウ酸 ($H_2C_2O_4$):
  1. 硫化水素 ($H_2S$):
  1. 金属 ($Na, Mg$ など):

3. どっちにもなれる「コウモリ」のような物質

(教科書 p.191)

「私は酸化剤!」「僕は還元剤!」と決まっている物質が多い中で、相手によって態度を変える物質が2つだけあります。これがテストによく出ます。

① 過酸化水素 ($H_2O_2$)

② 二酸化硫黄 ($SO_2$)

【後半】複雑な反応式の作り方と滴定

(教科書 p.192〜193 解説)

酸化還元の化学反応式は、係数が複雑で、暗記するのは不可能です。

しかし、**「3ステップの組み立て方」**さえ知っていれば、その場で作れます。

1. 酸化還元反応式の作り方(3ステップ法)

(教科書 p.192 例題)

例として、「過マンガン酸カリウム(酸化剤)」と「過酸化水素(還元剤)」の反応式を作ってみましょう。

ステップ①:半反応式($e^-$ の式)を並べる

p.190の表を見て、電子を含む式を書きます。

ステップ②:電子 $e^-$ の数を合わせて消す

①式は電子5個、②式は電子2個です。最小公倍数の「10」に合わせて足し算します。

 

$$2MnO_4^- + 16H^+ + 10e^- \rightarrow 2Mn^{2+} + 8H_2O$$

 

$$+) \quad 5H_2O_2 \rightarrow 5O_2 + 10H^+ + 10e^-$$

 

$$2MnO_4^- + 6H^+ + 5H_2O_2 \rightarrow 2Mn^{2+} + 8H_2O + 5O_2$$

...(イオン反応式)

※左辺の $16H^+$ と右辺の $10H^+$ を打ち消して、左辺に $6H^+$ が残りました。

ステップ③:省略されていたイオンを戻す

反応液には、省略されていた「観客イオン」がいます。

両辺に足して整理すると、完成です!

 

 

$$2KMnO_4 + 3H_2SO_4 + 5H_2O_2 \rightarrow 2MnSO_4 + K_2SO_4 + 8H_2O + 5O_2$$

2. 酸化還元滴定(実験で濃度を測る)

(教科書 p.193)

中和滴定と同じように、酸化還元反応を使って濃度を調べる実験です。

最も有名なのが**「過マンガン酸カリウム滴定」**です。

実験の特徴

計算の公式(中和と同じ!)

(教科書 p.193 ポイント)

 

$$(\text{酸化剤のモル}) \times (\text{受け取る} e^- \text{の数}) = (\text{還元剤のモル}) \times (\text{出す} e^- \text{の数})$$

詳しく書くと:

 

 

$$C_1 \times V_1 \times (\text{価数}) = C_2 \times V_2 \times (\text{価数})$$

計算自体は、中和滴定のときと全く同じ感覚で解くことができます。

全体のまとめ

この章(酸化還元)の重要ポイントは以下の通りです。

  1. 定義: 「電子を失う=酸化」「電子を得る=還元」。
  2. 酸化数: ルールに従って計算し、増減で判定する。
  3. 役割: 「酸化剤(自分は還元される)」と「還元剤(自分は酸化される)」。
  4. 式の作成: 半反応式の電子の数をそろえて合体させる。
  5. 計算: (モル $\times$ 電子数) がイコールになる。

これで酸化還元の分野は一通り完了です!

 

金属の格付けランキング(イオン化傾向)

(教科書 p.195〜198 解説)

1. イオン化傾向ってなに?

(教科書 p.195)

金属が水溶液中で、電子($e^-$)を捨てて陽イオンになろうとする性質の強さのことです。

いわば、金属たちの**「イオンへのなりたがり度ランキング」**です。

実験:銅と銀の力関係

硝酸銀水溶液($Ag^+$がいる)に、銅線($Cu$)を入れると、銅線の表面に銀($Ag$)が樹木のように析出します(銀樹)。

これは、**「銅の方が銀よりもイオンになりたがっている」**からです。

結論: イオン化傾向は $Cu > Ag$ です。

2. 金属のイオン化列(この順番は絶対暗記!)

(教科書 p.196)

いろいろな金属を「なりたがり順」に並べたものを「イオン化列」といいます。

教科書にある語呂合わせなどで、必ず順番を覚えましょう。

【イオン化列】

 

 

$$K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H_2) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au$$

3. 「何と反応するか?」のルール表

(教科書 p.197〜198,)

このランキングによって、「水」や「酸」に対する態度がガラリと変わります。ここがテストの最頻出ポイントです。

① 水との反応(どこまで溶ける?)

イオン化傾向が大きいほど、冷たい水でも激しく反応します。

② 酸との反応(水素が出るか?)

③ 特別な例外:不動態(ふどうたい)

(教科書 p.198 表7)

$Al$ (アルミニウム), $Fe$ (鉄), $Ni$ (ニッケル) の3人は、濃硝酸に入れると溶けません。

ここまでは「金属の強さランキング」の話でした。

電池の仕組みと種類

(教科書 p.199〜204 解説)

1. 電池の基本ルール(ここだけ覚えよう!)

(教科書 p.200 ポイント)

どんな複雑な電池でも、以下のルールは共通です。

2. 世界初の電池「ボルタ電池」

(教科書 p.199, p.200)

イタリアのボルタが発明した、最もシンプルな電池です。

voltaic cell diagramの画像Shutterstock

 

3. 進化した「ダニエル電池」

(教科書 p.201)

ボルタ電池の弱点(泡が出る)を克服した電池です。

ポイントは、**「素焼きの容器(しきり)」**を使って、2種類の液を分けたことです。

Daniell cell diagramの画像Shutterstock

 

4. 身近な実用電池①:マンガン乾電池

(教科書 p.202)

リモコンなどで使う普通の乾電池です。液こぼれしないように、電解液をペースト状にしています。

5. 身近な実用電池②:鉛蓄電池(なまりちくでんち)

(教科書 p.202, p.203)

車のバッテリーに使われる、重くてパワフルな電池です。充電して繰り返し使えます(二次電池)。

両方の極が「鉛」の仲間であることが特徴です。

反応のポイント(放電するとどうなる?)

なんと、負極も正極も、反応すると**同じ物質(硫酸鉛 $PbSO_4$)**に変身します。

  1. 両方の電極が白く ($PbSO_4$) なる。
  2. 水 ($H_2O$) が生まれるので、硫酸が薄くなる(濃度が下がる)。

充電(じゅうでん)

外部から逆向きに電気を流すと、反応が逆転して元の $Pb$ と $PbO_2$ に戻ります。硫酸の濃度も回復します。

全体のまとめ(第4章 電池)

(教科書 p.204 まとめ)

この章の要点は以下の通りです。

  1. イオン化傾向: $K > \dots > Al > Zn > Fe > \dots > Cu > Ag > Au$ の順を覚える。
  2. 電池の原理: イオン化傾向の大きい金属が負極になり、溶けて電子を出す。
  3. ボルタ電池: 負極は亜鉛、正極は銅。水素の泡で分極するのが欠点。
  4. ダニエル電池: 素焼き板で液を分け、泡が出ないように改良した。
  5. 鉛蓄電池: $Pb$ と $PbO_2$ が、硫酸中で反応して両方 $PbSO_4$ になる(充電可能)。

これで「電池」の範囲は完了です!

 

電気分解の仕組みと「優先順位」

(教科書 p.205〜208 解説)

1. 電気分解とは?

(教科書 p.205)

電解質の水溶液に電極を入れ、外部から電気エネルギー(電池など)をつないで、無理やり酸化還元反応を起こすことです。

電極の名前と役割

電池の極とつながっているかで名前が決まります。

2. 【最重要】「誰が反応する?」の優先順位

(教科書 p.206)

水溶液の中には、いくつかのイオンや水分子が混在しています。その中で誰が代表して電子を受け取る(または放出する)のかには、厳格なルールがあります。

このルールさえ覚えれば、どんな問題も解けます。

① 陰極での反応(電子を受け取るのは誰?)

**「イオン化傾向(なりたがり度)」**で決まります。

水溶液中にいる陽イオンを見て判断します。

  1. イオン化傾向が小さい金属 ($Ag^+, Cu^{2+}$ など) がいる場合:
  1. イオン化傾向が大きい金属 ($Na^+, K^+, Al^{3+}$ など) しかいない場合:

② 陽極での反応(電子を出すのは誰?)

**「電極の材質」「陰イオンの種類」**で決まります。

  1. 電極自体が金・白金・炭素以外 ($Cu, Ag$ など) の場合:
  1. 電極が $Pt$(白金)や $C$(炭素)の場合:

3. 具体例で見てみよう

(教科書 p.206〜207)

ルールを使って、代表的なパターンの結果を予測してみましょう。

パターンA:塩化銅(II)水溶液 ($CuCl_2$) + 炭素電極

パターンB:塩化ナトリウム水溶液 ($NaCl$) + 炭素電極

パターンC:硫酸銅(II)水溶液 ($CuSO_4$) + 白金電極

4. 電極を変えると結果が変わる?

(教科書 p.208)

同じ硫酸銅(II) ($CuSO_4$) 水溶液でも、陽極を白金($Pt$)から**銅($Cu$)**に変えると、反応が変わります。

電気分解の計算と応用

(教科書 p.209〜212 解説)

1. 電気分解の計算(ファラデーの法則)

(教科書 p.209, p.210)

化学反応式の主役は「モル(mol)」ですが、電気の世界の主役は「クーロン(C)」です。

この2つの世界をつなぐ**「通貨交換レート」**のようなものが、ファラデー定数です。

覚えるべき2つの公式

  1. 電気量(クーロン)の計算:

    $$Q(\text{クーロン}) = i(\text{アンペア}) \times t(\text{秒})$$
  1. 電子のモルへの変換(ファラデー定数):
    「電子 1mol の電気量は 96500 C である」

    $$e^- (\text{mol}) = \frac{Q(\text{C})}{96500(\text{C/mol})}$$

計算の3ステップ(例題 p.210)

「2.0A の電流を 32分10秒 流して、硫酸銅(II)水溶液を電気分解したとき、析出する銅($Cu$)は何gか?」

  1. ステップ①:電気量(C)を出す
  1. ステップ②:電子($e^-$)は何molか?
  1. ステップ③:係数を見て物質量(mol)を出す

2. 工業への応用①:銅の電解精錬(純銅を作る)

(教科書 p.211)

不純物を含んだ銅(粗銅)から、純度99.99%以上のピカピカの銅(純銅)を作る技術です。

ここでも「イオン化傾向」が活躍します。

copper electrolytic refining processの画像Shutterstock

 

3. 工業への応用②:融解塩電解(アルミを作る)

(教科書 p.212)

アルミニウム($Al$)やナトリウム($Na$)のような「イオン化傾向が大きい金属」は、水溶液の電気分解では作れません(水が先に反応してしまうため)。

そこで、水を一滴も使わず、塩を直接ドロドロに溶かして(融解して)電気分解します。

アルミニウムの製錬

4. 工業への応用③:水酸化ナトリウムの製造

(教科書 p.211)

食塩水($NaCl$)を電気分解すると、以下の反応が起きます。

このとき、できた塩素と$NaOH$が混ざると反応してしまうため、**「陽イオン交換膜」という特別なフィルターで仕切ります。この方法を「イオン交換膜法」**といいます。

全体のまとめ(第4章終了)

これで「電池と電気分解」の章は完了です。

  1. 電気分解の基本: 「誰が反応するか」の優先順位(イオン化傾向・ハロゲン・水)で決まる。
  2. 計算: $Q = i \times t$ と $96500$ を使って、電子のモル数を求めるのが全ての始まり。
  3. 応用: 銅の精錬(陽極泥)、アルミの製造(氷晶石)、$NaOH$の製造(イオン交換膜)は、名前と役割をセットで覚える。

非常に内容の濃い章でしたが、ここまで理解できれば高校化学の理論分野(物質の変化)の基礎はバッチリです。

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