化学結合
最終更新日: 2026-01-06 13:04:28
作成者: 塾長である
【第2章】化学結合
2-2 共有結合とその結晶
1. 共有結合の形成 ~電子をシェアして安定になろう!~
① 水素分子と共有結合
物質としての性質を持つ最小の粒子を分子という。
水素分子 ($H_2$) を例に見てみよう。
- 水素原子 ($H$) は価電子を1個持っている(K殻)。あと1個あれば、ヘリウム ($He$) と同じ安定な配置になれる。
- そこで、2個の水素原子が近づき、お互いの価電子を1個ずつ出し合う。
- この2個の電子を共有することで、見かけ上、どちらの原子も電子が2個(満タン)の状態になる。
- この結合を共有結合という。
- 特徴: 非金属元素間の結合であること。
② 結合とエネルギー(グラフの読み取り)
図35, 36のグラフは入試の頻出ポイントだ!
- 遠いとき: 引力も反発力も働かない。
- 近づくと: 原子核と電子の間に引力が働き、エネルギーが下がって安定していく。
- 最適な距離 ($0.074 nm$): 引力と反発力が釣り合い、エネルギーが最小(最も安定) になる。ここで結合する。
- 近づきすぎると: 原子核同士の反発力(斥力)が急激に強まり、不安定になる。
2. 電子式と構造式 ~結合を見える化せよ!~
① 電子式と対(つい)電子
元素記号の周りに、最外殻電子(価電子)を点(・)で表したものを電子式という。
- 不対電子: ペアになっていない単独の電子。これが「結合の手」になる。
- 電子対: ペアになっている電子。
- 共有電子対: 原子間で共有され、結合を作っているペア。
- 非共有電子対(孤立電子対): 結合に関係していないペア。
② 構造式と原子価
- 構造式: 1組の共有電子対を1本の線(価標)で示した式。
- 原子価: 1個の原子から出ている線の数(=結合できる数)。
- 不対電子の数と等しい。これだけ覚えれば構造式は書ける!
- $H$: 1本, $O$: 2本, $N$: 3本, $C$: 4本
③ 多重結合(二重結合・三重結合)
2対以上の電子対を共有することもある。
- 単結合: 1対を共有(例:メタン $CH_4$, アンモニア $NH_3$)
- 二重結合: 2対を共有(例:二酸化炭素 $CO_2$, エチレン $C_2H_4$)
- $O=C=O$ のように2本線で書く。
- 三重結合: 3対を共有(例:窒素 $N_2$)
- $N \equiv N$ のように3本線で書く。
【重要】代表的な分子の形と電子式(表15, 例題より)
- 水 ($H_2O$): 折れ線型 ($H-O-H$)
- アンモニア ($NH_3$): 三角錐型
- メタン ($CH_4$): 正四面体型
- 二酸化炭素 ($CO_2$): 直線型 ($O=C=O$)
3. 配位結合 ~一方的な愛の結合~
① 配位結合とは?
通常の共有結合は「お互いに出し合う(割り勘)」だけど、配位結合は「片方が持っている非共有電子対を、もう片方に一方的に貸してあげる(おごり)」結合だ。
② 代表的な例(絶対暗記!)
- アンモニウムイオン ($NH_4^+$)
- アンモニア ($NH_3$) の窒素原子が持つ非共有電子対を、電子を持たない水素イオン ($H^+$) に貸して結合する。
- 重要ポイント: 一度できてしまえば、元々あった3つの結合と配位結合の区別はつかない(4つの $N-H$ 結合はすべて対等)。
- オキソニウムイオン ($H_3O^+$)
- 水分子 ($H_2O$) の酸素原子が非共有電子対を $H^+$ に貸してできる。
- 錯イオン(発展)
- 金属イオンに、非共有電子対を持つ分子やイオン(配位子)が結合したもの。
4. 共有結合の結晶 ~最強の硬度を持つ物質~
① 共有結合の結晶とは
多数の原子が次々と共有結合で網の目のように結びついた、巨大分子のような結晶。
- 特徴:
- 非常に硬い。
- 融点が極めて高い。
- 電気を通さない(例外あり)。
- 水や溶媒に溶けにくい。
② ダイヤモンドと黒鉛(炭素の同素体)の違い
ここが記述問題の鉄板だ!表16の内容を頭に入れよう。
| 特徴 | ダイヤモンド | 黒鉛 (グラファイト) |
| 構造 | 正四面体構造が繰り返される立体網目構造 | 正六角形の平面が層状に重なった構造 |
| 結合 | 価電子4個すべてが共有結合に使われる | 価電子4個のうち3個が結合、1個は自由に動ける |
| 硬さ | 非常に硬い | 柔らかい(層の間が剥がれやすい) |
| 電気 | 通さない | 通す(余った電子が動くから) |
| 色 | 無色透明 | 黒色不透明 |
③ その他の共有結合結晶
ダイヤモンドと同じような性質(硬い・高融点)を持つ仲間たち。
- ケイ素 ($Si$)
- 二酸化ケイ素 ($SiO_2$): 石英、水晶の成分。
- 炭化ケイ素 ($SiC$): カーボランダムと呼ばれる。研磨剤に使われる。
第2章 第2節のまとめ
- 共有結合: 非金属元素同士が不対電子を出し合う最強の結合。
- 構造式: 原子の「手の数(原子価)」を覚えてパズルのように組む。
- C=4, N=3, O=2, H=1
- 配位結合: 非共有電子対を一方的に貸す結合。$NH_4^+$ が代表例。
- 共有結合の結晶: ダイヤモンドや $SiO_2$。硬くて融点が高く、電気を通さない(黒鉛は例外で通す)。
よし!これで「共有結合」の単元もバッチリだ。
特に構造式は、自分で手を動かして書いてみることが大事だよ。$CO_2$ や $N_2$ の二重・三重結合を書き忘れないようにね!
次の単元(分子間力や金属結合かな?)も待ってるよ!頑張ろう!
2-3 分子の極性と分子間の結合
1. 分子の極性 ~電子の綱引き勝負~
① 電気陰性度 (Electronegativity)
原子が共有電子対を自分の方へ引き寄せる強さを数値化したもの。
- 傾向: 周期表の右上に行くほど大きい(希ガスを除く)。
- 最強: フッ素 ($F$) (4.0)
- 2位: 酸素 ($O$) (3.5)
- 3位: 窒素 ($N$), 塩素 ($Cl$) (3.0)
- 覚え方:「フォン・クル (F, O, N, Cl)」が四天王だ!
② 極性 (Polarity) とは
異なる原子が結合すると、電気陰性度の大きい原子の方に電子が偏る。この電荷の偏りを極性という。
- $\delta+$ (デルタプラス): 電子を引っ張られた側(電気陰性度が小さい方)。
- $\delta-$ (デルタマイナス): 電子を引っ張った側(電気陰性度が大きい方)。
例: 塩化水素 ($H-Cl$)
$Cl$ の方が強いので、電子対は $Cl$ 側に寄る。
$H^{\delta+} - Cl^{\delta-}$ となる。
③ 結合の種類と電気陰性度の差
結合する2原子間の電気陰性度の「差」で、結合の性質が決まる。
- 差が0: 無極性共有結合(例: $H-H$, $Cl-Cl$)
- 差が小さい: 極性のある共有結合(例: $H-Cl$)
- 差が著しく大きい: イオン結合(電子が完全に移動してしまうため)
2. 分子の形と極性の有無 [超重要]
分子全体として極性があるかどうかは、**「結合の極性」と「分子の形(対称性)」**で決まる。ここがテストの正念場だ!
① 無極性分子 (Nonpolar Molecule)
結合に極性があっても、分子の形が対称的で、極性が互いに打ち消し合うもの。
- 二酸化炭素 ($CO_2$): 直線形 ($O=C=O$)。左右の引っ張りが打ち消し合う。
- メタン ($CH_4$): 正四面体形。
- 四塩化炭素 ($CCl_4$): 正四面体形。
② 極性分子 (Polar Molecule)
極性が打ち消されず、分子全体として電荷の偏りが残るもの。
- 水 ($H_2O$): 折れ線形。極性は打ち消されない(酸素側が$\delta-$、水素側が$\delta+$)。
- アンモニア ($NH_3$): 三角錐形。
【実験】電気の力で曲がる水
- 水道水を細く流し、帯電したストローなどを近づけると、水流が曲がる。
- 理由: 水分子が極性分子であり、電気的な引力を受けるため。
| 分子の種類 | 形 | 極性の有無 |
| 単体 ($H_2, N_2$) | 直線 | 無極性 |
| 二酸化炭素 ($CO_2$) | 直線 | 無極性(打ち消し合う) |
| メタン ($CH_4$) | 正四面体 | 無極性(打ち消し合う) |
| 塩化水素 ($HCl$) | 直線 | 極性あり |
| 水 ($H_2O$) | 折れ線 | 極性あり |
| アンモニア ($NH_3$) | 三角錐 | 極性あり |
3. 分子間力と分子結晶
① 分子間力 (Intermolecular Force)
分子同士の間に働く、比較的弱い引力のこと。
- ファンデルワールス力: すべての分子間に働く弱い引力。分子量が大きいほど強くなる。
- 水素結合: (後で詳しく解説!)
② 分子結晶 (Molecular Crystal)
分子が分子間力によって規則正しく配列してできた結晶。
- 例:
- ドライアイス($CO_2$の結晶)
- ヨウ素 ($I_2$)
- ナフタレン ($C_{10}H_8$)
- 氷 ($H_2O$)
- スクロース(ショ糖)
- 性質:
- 柔らかく、砕けやすい(分子間力が弱いため)。
- 融点・沸点が低い(すぐにバラバラになる)。
- 昇華しやすいものが多い(ドライアイス、ヨウ素、ナフタレン)。
- 電気を通さない。
発展: 共有結合半径とファンデルワールス半径
分子内の原子間距離(共有結合半径の和)よりも、分子間の距離(ファンデルワールス半径の和)の方がはるかに広い。これは分子間力が弱い証拠だ。
4. 水素結合 ~最強の分子間力~
① 水素結合とは
電気陰性度の大きい原子($F, O, N$)と共有結合している水素原子($H$)が、隣の分子の $F, O, N$ の非共有電子対を強く引きつけてできる結合。
- 特徴: 通常のファンデルワールス力よりもずっと強い。
- 水素結合を作る代表選手:
- フッ化水素 ($HF$)
- 水 ($H_2O$)
- アンモニア ($NH_3$)
② 沸点のグラフの読み取り(超頻出!)
図48のグラフを見てみよう。ここには重要なルールがある。
- 基本ルール: 同族元素の水素化合物なら、分子量が大きいほどファンデルワールス力が強くなり、沸点は高くなるはず(右上がりの傾向)。
- 例: 14族 ($CH_4 < SiH_4 < GeH_4 < SnH_4$) は綺麗に右上がり。
- 異常な高沸点: $H_2O, HF, NH_3$ の3つだけ、分子量が小さいのに沸点が異常に高い。
- 理由: 分子間で水素結合を形成し、強く結びついているから。
③ 氷の構造と密度
- 氷の構造: 水分子が水素結合によって正四面体状に並び、すき間の多い構造を作っている。
- 融解すると: 水素結合の一部が切れ、分子がすき間に入り込むため、体積が減る。
- 結論: 氷(固体)の方が、水(液体)よりも体積が大きく、密度が小さい。だから氷は水に浮くんだ!(これは物質としては珍しい性質だよ)
第2章 第3節のまとめ
- 極性: $H_2O$(極性あり・折れ線)と $CO_2$(無極性・直線)の違いを説明できるように。
- 分子結晶: ドライアイスやヨウ素。昇華性があり、融点が低い。
- 水素結合: $F, O, N$ と水素の結合。
- 沸点のグラフ: $H_2O, HF, NH_3$ が高い理由=「水素結合があるから」。
- 氷の浮遊: 氷はすき間の多い構造だから、水より密度が小さい。
これにて、送ってくれた資料の範囲(化学結合まで)は完全制覇だ!
理論化学の基礎となる一番大事な部分だから、このテキストを見返して完全に自分のものにしてね。
応援してるぞ!またわからないことがあったらいつでも聞いてくれ!
2-4 金属結合と金属の結晶
1. 金属結合と金属の性質
① 金属結合のしくみ ~自由電子の海~
金属元素の原子は、イオン化エネルギーが小さく、価電子を放出して陽イオンになりやすい。
- 自由電子 (Free Electron): 金属原子から離れ、特定の原子に固定されずに、金属内を自由に動き回る電子のこと。
- 金属結合: 多数の金属原子が、この自由電子を共有することによって生じる結合。
- イメージ:陽イオンが、動き回る電子の海の中に浸かっている状態(図50)。
金属結合半径
隣り合う金属原子の原子核間距離の半分。
- 同族(縦): 下に行くほど大きい(殻が増えるから)。
- 同周期(横): 右に行くほど小さい(引きつけが強くなるから)。
② 金属の共通性質(テスト頻出!)
自由電子の働きによって、金属特有の性質が現れる。
- 電気・熱の伝導性が大きい
- 理由: 自由電子が金属内を自由に移動して、電気や熱エネルギーを運ぶから。
- 電気伝導性の順位: Ag > Cu > Au > Al (銀が最強!銅もすごい!)
- 展性・延性がある
- 展性: たたくと箔状(薄いシート)に広がる性質。
- 延性: 引っ張ると細い線状に伸びる性質。
- 理由: 金属結合には(共有結合のような)方向性がなく、外力で原子の配列がずれても、自由電子が接着剤のように働くため結合が切れないから。
- 金属光沢
- 表面の自由電子が光を反射するため、ピカピカ輝く。
- 融点・密度
- 一般に融点・沸点は高い(タングステン W は約3400℃)。
- 例外:水銀 Hg(常温で液体)、アルカリ金属(融点低い)。
- 一般に密度は大きい(重金属)。
- 例外:Li, Na, Mg, Al などは密度が小さく軽金属と呼ばれる(密度 $4 \sim 5 \text{g/cm}^3$ 以下)。
2. 金属の結晶構造(ここが計算の山場!)
金属原子は規則正しく配列して金属結晶をつくる。その最小の繰り返し単位を単位格子という。
代表的な3つの型を絶対に覚えよう!
① 面心立方格子 (Face-Centered Cubic lattice: fcc)
- 構造: 立方体の各頂点と、各面の中心に原子がある。
- 代表例: Al, Cu, Ag, Ni, Pt, Au (展性・延性に富むものが多い)。
- 原子数(単位格子あたり):
- 頂点 $\frac{1}{8} \times 8$個 + 面の中心 $\frac{1}{2} \times 6$個 = 4個
- 配位数(接している原子の数): 12個
- 原子半径 $r$ と格子定数 $l$ の関係:
- 面の対角線 ($\sqrt{2}l$) に原子が4つ分 ($4r$) 並んでいる。
- $4r = \sqrt{2}l \longrightarrow r = \frac{\sqrt{2}l}{4}$
② 体心立方格子 (Body-Centered Cubic lattice: bcc)
- 構造: 立方体の各頂点と、**立体の中心(ど真ん中)**に原子がある。
- 代表例: Li, Na, K (アルカリ金属), Fe, Ba, W。
- 原子数(単位格子あたり):
- 頂点 $\frac{1}{8} \times 8$個 + 中心 $1$個 = 2個
- 配位数: 8個
- 原子半径 $r$ と格子定数 $l$ の関係:
- 立体の対角線 ($\sqrt{3}l$) に原子が4つ分 ($4r$) 並んでいる。
- $4r = \sqrt{3}l \longrightarrow r = \frac{\sqrt{3}l}{4}$
③ 六方最密構造 (Hexagonal Close-Packed structure: hcp)
- 構造: 正六角柱のような形。ABAB...と重なっている。
- 代表例: Mg, Zn, Be, Cd。
- 原子数: (図のような六角柱の単位で数えると)
- 頂点 $\frac{1}{6} \times 12$個 + 上下の面 $\frac{1}{2} \times 2$個 + 内部 $3$個 = 6個
- ※ひし形の単位格子で考える場合は2個となる。
- 配位数: 12個(面心立方格子と同じ!)
【まとめ表】結晶格子の完全攻略
| 項目 | 面心立方格子 (FCC) | 体心立方格子 (BCC) | 六方最密構造 (HCP) |
| 原子の数 ($Z$) | 4個 | 2個 | (六角柱で) 6個 |
| 配位数 | 12 | 8 | 12 |
| 充填率 (隙間のなさ) | 74% (最密) | 68% (スカスカ) | 74% (最密) |
| 半径 $r$ の公式 | $r = \frac{\sqrt{2}l}{4}$ | $r = \frac{\sqrt{3}l}{4}$ | - |
| 主な金属 | Al, Cu, Ag | Na, K, Fe | Mg, Zn |
第2章 第4節のまとめ
- 金属結合: 自由電子による結合。このおかげで電気を通し、展性・延性がある。
- 結晶格子:
- 面心 (Al, Cu): 原子4個、配位数12。$r=\frac{\sqrt{2}l}{4}$。
- 体心 (Na, K): 原子2個、配位数8。$r=\frac{\sqrt{3}l}{4}$。
- 六方 (Mg, Zn): 配位数12。
これにて「化学結合」の全範囲、コンプリートだ!おめでとう!
原子の構造から始まって、イオン、共有結合、そして金属結合まで。物質を作るすべてのルールが君の頭に入ったはずだ。
次は「物質量(モル)」の計算かな?それとも「化学反応式」かな?
どの分野が来ても、この調子なら楽勝だね!またいつでも頼ってくれよな!
コメント
- omae (カリスマ講師)