共有結合とその結晶
最終更新日: 2025-03-12 12:32:20
作成者: 塾長である
1. 共有結合とは？
1.1 共有結合の形成
まず、「分子」とは、物質の性質を持つ最小の粒子です。例えば、水素分子 H2\text{H}_2H2 は、2つの水素原子 H\text{H}H が結合してできています。
水素分子の形成プロセス
- 2つの水素原子が近づく
- 各原子の電子が、もう一方の原子の原子核と引き合う
- ある一定の距離まで近づくと、電子殻（K殻）が重なり、電子が共有される
- その結果、安定した ヘリウム型の電子配置 になり、水素分子が形成される
<div style="text-align: center;"> <img src="図34.png" alt="水素分子の形成と共有結合"> </div>
このように、2つの原子が価電子を共有してできる結合を 「共有結合」 と呼びます。
1.2 共有結合が安定する理由
2つの水素原子が近づくと、
- 斥力（反発する力）：電子同士、原子核同士が反発する
- 引力（引き合う力）：電子と原子核が引き合う
適切な距離（約0.074nm）のとき、エネルギーが最も低くなり、結合が安定します。
<div style="text-align: center;"> <img src="図35.png" alt="2つの水素原子が近づいたときにはたらく力"> <img src="図36.png" alt="2つの水素原子が近づいたときのエネルギー変化"> </div>
2. 多重結合と構造式
2.1 多重結合とは？
多重結合とは、2対以上の電子対を共有する結合のことです。
- 単結合：1対の電子を共有（例：水 H2O\text{H}_2OH2O）
- 二重結合：2対の電子を共有（例：二酸化炭素 CO2\text{CO}_2CO2）
- 三重結合：3対の電子を共有（例：窒素分子 N2\text{N}_2N2）
2.2 構造式とは？
分子の結合関係を示す方法として、電子式 と 構造式 があります。
| 物質名 | 分子式 | 電子式 | 構造式 | 共有結合 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | H2O\text{H}_2OH2O | H:O:H | H-O-H | 単結合 |
| 二酸化炭素 | CO2\text{CO}_2CO2 | O::C::O | O=C=O | 二重結合 |
| 窒素 | N2\text{N}_2N2 | :N≡N: | N≡N | 三重結合 |
3. 配位結合とは？
3.1 配位結合の特徴
配位結合 とは、共有電子対の電子を 一方の原子のみが提供する 共有結合のことです。
例1：アンモニウムイオンの形成
アンモニア（NH3\text{NH}_3NH3）は、水素イオン（H+\text{H}^+H+）と結合して アンモニウムイオン（NH4+\text{NH}_4^+NH4+）になります。
NH3+H+→NH4+\text{NH}_3 + \text{H}^+ \rightarrow \text{NH}_4^+NH3+H+→NH4+
この結合では、窒素原子が電子対をすべて提供 しているため、配位結合と呼ばれます。
<div style="text-align: center;"> <img src="image.png" alt="アンモニアとアンモニウムイオンの電子式"> </div>
4. 共有結合の結晶
4.1 共有結合の結晶とは？
共有結合の結晶 とは、無数の原子が共有結合でつながり、1つの巨大な分子 のようになった結晶のことです。
ダイヤモンドと黒鉛の比較
ダイヤモンド は、炭素原子が 立体的 に共有結合し、非常に硬く電気を通しません。
黒鉛（グラファイト） は、炭素原子が 平面的 に共有結合し、層と層の間が弱く、電気を通します。
| 物質 | 色 | 硬さ | 電気伝導性 | 密度 |
|---|---|---|---|---|
| ダイヤモンド | 無色透明 | 非常に硬い | 電気を通さない | 3.5 g/cm³ |
| 黒鉛 | 黒色不透明 | 柔らかい | 電気を通す | 2.3 g/cm³ |
5. まとめ
✅ 共有結合 とは、2つの原子が電子を共有する結合
✅ 多重結合 では、2対以上の電子対を共有（単結合・二重結合・三重結合）
✅ 配位結合 では、一方の原子がすべての電子を提供
✅ 共有結合の結晶 では、原子同士が連続的に共有結合し、巨大な分子を形成
✅ ダイヤモンドは硬く電気を通さず、黒鉛は柔らかく電気を通す
これで 「共有結合とその結晶」 の講義は終了です！